マサイ族との結婚で一番驚いたこと
――ではジェームスさんは今、戦士の世代?
鶴本 そうです。こういう感じで髪が長くてジャラジャラいろんなものを着けておしゃれするのも、戦士世代の特徴らしいです。彼は特にアクセサリーを着けるのが好きなタイプですね。
――今日の取材のためにおしゃれをしてくれたというよりは、普段からおしゃれなんですね。
鶴本 こういうネックレスとか、結構重いんで、用事によっては減らしたり。あと、場所によっては椅子とかに引っかかっちゃうんで外してますね。
――鶴本さんはマサイ村でも生活をしたんですか。
鶴本 ザンジバルで結婚して、その数週間後ぐらいにマサイ村のほうに引っ越しました。
ザンジバルは島なんですけど、そこから2時間かけてフェリーで本土に渡り、8時間かけてバスを2回乗り継いで一番近い町に出て、最後、バイクタクシーで30分ぐらい行ったところにマサイ村がありました。
本当に奥地にあって、縄文時代じゃないですけど、そこだけタイムスリップしたような、藁でできた家がポツンポツンとある、まさに“村”でした。
――マサイ族との結婚における理想と現実という部分で、一番驚いたことは?
鶴本 驚いたのは、夫婦の時間がまったくないことです。まず、男女一緒にご飯を食べないルールというか、マサイ族の掟があるんです。
最初こそ気を遣って私のそばにいてくれたんですけど、気づいたらもう彼はいなくなっていました(笑)。
――かといって知り合いもいないし、言葉もなかなか通じないですよね。
鶴本 ザンジバルでスワヒリ語はかなり喋れるようになっていたんですけど、マサイ語は私も全然知らなかったので、皆が何を言ってるのかまったくわからなくて。
結婚して家も建ててもらってやっと一緒に暮らせると思ったのに、彼はほとんど家にいないし、男女別が基本だから、まるで女子寮にいるような生活でした。

