出所後は1年間の自宅軟禁・保護観察処分とされたが、ニューヨークの邸宅とエプスタイン島にある邸宅を社用機で往復することを許されていた。これも常軌を逸した処遇であり、当時、世論の大きな反発を招いている。

 これはエプスタインを訴追した、当時のフロリダ州南部地区連邦検事アレクサンダー・アコスタと、エプスタインの弁護団の一員であった弁護士アラン・ダーショウィッツが司法取引を行なった結果だった。

 ダーショウィッツは著名人の弁護で知られており、ハーヴェイ・ワインスタイン、ジュリアン・アサンジ、O.J.シンプソンなどを手掛けている。2020年のトランプの最初の弾劾裁判でも弁護団の一員だった。他方、検事のアコスタは、のちにトランプ政権第1期の労働長官に任命された人物だ。

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ハリウッドの大物映画プロデューサー、ハーヴェイ・ワインスタイン。2017年、彼が長期にわたって周囲の女性に性暴力・性的虐待を行っていたことを「ニューヨーク・タイムズ」が報じた。その後実刑判決を受け、現在も収監中 ©AFLO

死後6年経っても囁かれる「他殺説」

 エプスタインは初回の逮捕から11年後の2019年7月6日にニューヨークで再度の逮捕をされている。容疑は2002年から2005年にかけての性的人身売買だった。マンハッタンの邸宅が家宅捜査され、「大量の全裸または半裸の女性の性的に挑発的な写真」や、手書きの「少女ヌード写真」といったラベルが貼られたコンパクトディスクなどが押収された。

 マンハッタンにある留置場に収監されたエプスタインは保釈を要求し、自宅軟禁を条件に1億ドルの保釈金を申し出たが、判事はこれを却下。

 逮捕から36日目となる2019年8月10日、エプスタインは収監されていた独房で死亡しているのを発見された。検死官は死因を自殺とし、当時のトランプ政権の司法長官ウィリアム・バーもそれに同意した。だが、死後6年経った今も自殺を信じず、他殺説を唱える声が少なからずある。

不審な点の数々

 エプスタインの出世物語には不審な点が散見される。教員資格を持たない大学中退者がなぜ、マンハッタンの一流高校の教職に就けたのか。

 独立して間も無くヴィクトリアズ・シークレットの全財務を一手に引き受け、これがエプスタインの経済的な土台になったとされている。CEOはなぜエプスタインに全権を委ね、膨大な支払いを行ったのか。

 また、エプスタイン本人とエプスタインの犠牲者であった女性以外にもエプスタインと関わった人物が自殺している。2022年にフランスのモデルエージェンシー、ジャン=リュック・ブルネルがパリの独房で亡くなっているのだ。

 ブルネルは複数の強姦や性的暴行の疑いで収監されていたが、エプスタインのためにヨーロッパから少女や若い女性を移送していた疑いもあった。ブルネルはエプスタインからの資金提供を受け、アメリカにもエージェンシーを設立していたのだった。

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