――クラスの子たちみんなが「デブスパッツ」と呼んでくるように?

前川 クラスの半分くらいの子は「前川さん」と呼んでくれていましたが、男子も女子もいわゆるスクールカーストの上位にいるような子からは軽いイジリとして「デブスパッツ」と呼ばれることはありました。

――イジメのターゲットにされていた、ということですか?

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前川 実は「イジメ」というほどではなくて。その塩梅が微妙で、「次、国語だよね」みたいな普通の会話はあるんです。殴られたり、物を隠されたりといったあからさまなイジメでもなくて、やってる側は「イジリ」として面白いつもりだったんだと思います。

 

 自分としても、もちろんイヤなんだけど大ごとにしたら「ノリが悪い」と言われそうだし、いじってくる多数に1人では勝てないので、シリアスに受け止めないように我慢してやり過ごしていました。その結果、本人も言わないしイジメというほどでもなく……という感じで問題にならなかった気がします。

「私が着たらきっとみんな笑うんだろうなと思って…」

――小5というとオシャレに関心が出てくる年齢ですが、服の選び方なども制限されますよね。

前川 クラスのオシャレな子たちは人気ブランドの服を着ていて、私もそういう服を着たいという憧れはあったんですけど、「デブスパッツ」というあだ名をつけられた私が着たらきっとみんな笑うんだろうなと思って一度も着られませんでしたね。

 

――実際のところ前川さんの体型はどうだったのでしょう。

前川 自分でも「デブスパッツ」と言われるくらいだから、きっと当時はぽっちゃりはしてたんだろうと思ってずっと生きてきたんですけど、数年前に当時の写真を見たら特別太っていなかったんですよ。ごく普通の体型だったんです。あだ名のせいで私の中での記憶も結構すり替えられていたというか。

 だから実際は体型よりも、レギンスを1枚で着てるのが珍しくてイジリのターゲットになったんだと思います。