慶応義塾大学卒業後、三井不動産、JICAや外務省で勤務と輝かしい経歴を持つが、20年近く容姿にコンプレックスを持ち続けてきたという前川裕奈さん(36)。ダイエットを始めてからは一日に飴玉3個で過ごしたり、時には無理やり吐いたりと、過激な方法もとってきた。

 コンプレックスを持ったのは子どもの頃につけられたあだ名がきっかけだったが、ダイエットにのめり込んだのは意外な理由だった(全3回の2回目/続きを読む)。

前川裕奈さん ©文藝春秋 撮影・榎本麻美

◆◆◆

ADVERTISEMENT

――女子校での中高6年間から共学の慶應義塾大学に入学して、どんな変化がありましたか?

前川 高校生のときは男子とリアルで接することがほとんどなくて、生粋の二次元オタクだったので恋愛には関心がそもそも向いていませんでした。でも大学に入ってみたら男子がたくさんいますし、当時のファッション誌はCanCamなど「モテ」全盛の時代だったので、「イケてる人になるにはモテを意識しなきゃ」と思ってました。

「もう少し痩せればいいのに。あと一歩だよ」

――当時の前川さんはどんな外見だったんでしょう。

前川 受験期に大食いして人生最高体重になっていました。数値だけ見れば標準の範囲なんですけど、部活にも入っていなかったので運動も全くしたことがなかったですし、甘いドリンクばっかり飲んでいたので筋肉が全然なくて。

 ぱっと見て明らかに大きいわけではないんですけど、「顔のパーツはいいのに体がちょっと残念だよね」と言われることはありましたね。褒め言葉ではじめればいいという感覚だったのかもしれませんけど、実際は全然アウトですよね。

 

――誰に言われるんですか?

前川 たとえばサークルの男子から、ふいに「もう少し痩せればいいのに。あと一歩だよ」と言われたり。

――だいぶ失礼ですよね。

前川 実は当時の私はそれが失礼だというのがわかってなくて、「やっぱりそうだよね」とストレートに納得してしまってたんです。「痩せればモテるのか、頑張ろう」というか。

 小学校で「デブスパッツ」と言われたときは傷ついたのに、大学では「痩せなきゃ」と思うようになっていたんです。