慶應義塾大学卒業後、三井不動産会社、JICAや外務省で勤務と輝かしい経歴を持つが、子どもの頃に「デブスパッツ」というあだ名をつけられてから、20年近く容姿にコンプレックスを持ち続けてきたという前川裕奈さん(36)。
極端な食事制限など過激なダイエットを始めたところ、周りから褒められるようになり、「また痩せた?」と言われる快感にのめり込んでいったという。
そんな前川さんは6年前にスリランカで起業し、現在はルッキズムを和らげるための発信も続けている。「痩せが正義」という固定観念からどのように脱出できたのか、経緯を聞いた(全3回の3回目/最初から読む)。
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――162cm39kgというところまで痩せて「細い」と褒められる快感の虜になっていた前川さんが、「痩せていなければ美しくない」という考えからどうやって抜け出せたのでしょう。
前川 いくつかのターニングポイントとなる経験がありました。まずは、三井不動産を退職した後に早稲田の大学院に入り直したのですが、アメリカに留学した時の体験がきっかけになった思います。留学先のシェアハウスで、「朝活」という形で皆で筋トレをしてたんです。私は当時は痩身を維持するために参加していました。
ある日、そのグループで、「女子で誰が一番セクシーだと思うか」という雑談をしてたんですよね。まあ、その雑談自体は下世話なものではあるのですが。
日本では褒められていたのに「自信がなさそうだからセクシーだと思わない」とバッサリ
――前川さんの名前があがったのですか??
前川 その頃の私は、細さも極まっていたし日本ではよく褒められていたんですけど、「いつも自信がなさそうだからセクシーだと思わない」とバッサリ言われました。
一方で名前があがるのは、かなり追い込んだ筋トレをしていたハンガリー人の子でした。凄く筋肉質で背が高い、強い感じが「堂々としててかっこいい」、と。枝豆のようにボコっと筋肉が盛り上がった腕を常に出している子で、確かにその子は自信に溢れていて、おまけに頭もよくて性格もよくてかっこいい子だったんですけど、当時の私の感覚とは違い過ぎて衝撃を受けました。
――日本の「モテ」が通用しない。
前川 自分が思い込んでいた「こうならなきゃ」という姿が絶対じゃないことに、そこでようやく気づけたんだと思います。そして、いかに自分が「自信のなさ」を放出してしまっていたかも。そのメンバーでいることで、徐々に食べるものも変わっていって、体型も痩せより健康や走れることを優先するようになっていきました。

