――ダイエットを開始したのもそれが理由でしたか?

前川 実はダイエットを本格的に始めたのは、大学2年生のときに当時付き合っていた男性と別れたことがきっかけでした。

 体型が理由で別れたわけでは全くないんですけど、「次に会うときに激痩せしてたら考え直してくれるんじゃないか」と勝手に思い込んで、人生初のダイエットを始めました。その人に体型いじりをされたことはなかったのに、結局は自分自身が自分の容姿を一番常に責めていたんだと思います。

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――どんなダイエットを始めたんでしょう。

前川 最初に失恋のショックで4日ほどまともに食事ができなくなったときに体が軽くなった気がしたので、「食べなければ痩せる」と1日1食サラダだけで過ごすようになりました。前から母にランニングを勧められていて、母の意図はもちろん健康や気分転換だったんですけど、私は痩せるためにと思って毎日走るようになりました。

 全く運動していなかった人間が一気に追い込んだこともあって、最初の1カ月で10kgくらい痩せましたね。

「痩せただけでこんなに褒められるのかと驚いて、その快感に夢中になってしまったんです」

――急激ですね。別れた彼は振り向いてくれましたか?

前川 それが、実際に痩せ始めたら彼にどう思われるかはどうでもよくなっちゃったんです。人生初めてのダイエットで体重が急激に落ちて、腕や脚が自分だと思えないくらい細くなることが楽しくなっちゃって。その彼に連絡することすら忘れてました。今までなんとなく生きづらいと思っていた社会に対して、痩せればこんなに違う世界がみえるのか、と。

 周囲の人にも「痩せたね」「かわいい」と言われるようになって、小学校で「デブスパッツ」と言われて以来ずっと劣等感の中で生きてきた私が、痩せただけでこんなに褒められるのかと驚いて、その快感に夢中になってしまったんです。とにかくヒエラルキーを登りたくて必死でした。

 

――褒められる快感を知ってダイエットにのめりこんでいった。

前川 同時に「死ぬまで気を引き締めないとすぐデブスパッツに戻っちゃう」という恐怖心もつきまとっていました。

 当時の私は40kgを下回るのが目標でした。45kgを超えたら人に会いたくなくなって、水すら飲むのが怖くて飲まなかったり、食事のあとに自分で吐くこともありました。