電気、ガス、水道も止められ…貧乏よりも辛かったこと

 公演の準備や突然のオーディションのため、定期的なバイトを入れることができず、自ずと生活は極貧になっていく。電気、ガスが止まるのは当たり前。ライフラインの水道まで止められたことがあった。

「もう全く食えない状態でしたね。パン1個買うのもめちゃくちゃ悩むレベルといいますか、皿にローソクをくっつけて、それで台本を読んだり。一生懸命揺れる光で読んでました」(『新・情報7days ニュースキャスター』2021年3月13日)

NHK『あんぱん』Xより

 しかし、貧乏よりも辛いことがあった。表現者として自分が認められないことだった。

「(筆者注:お金がないことより)辛かったのは、自分が何者でもないということ。表現の道を志し、一生懸命やっているつもりなのに、表現する場自体がない。誰にも何も届けられない。世の中の誰一人として役者としての自分を必要としていないんだという事実がなかなかハードで、どん底を感じる瞬間が何度もありました」(mi-mollet 2021年3月26日)

 10代、20代を津田は「鬱屈期」としている。もっとも不遇な時代だったのは間違いない。

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津田健次郎写真集『FLOWING』(スタジオワープ、2014年)

24歳で声優デビュー後も、バイト生活が続いた

 そんな中、24歳のときに津田はあだち充原作のアニメ『H2』のオーディションに合格し、野田敦役で声優デビューを果たす。何も知らずに現場に出た津田をさりげなく指導したのは、『タッチ』の上杉達也役などで知られる大先輩の声優、三ツ矢雄二だった。

 しかし、声優デビューしても生活が楽になるわけではない。貧しい生活は続いた。この時期、津田はさまざまなバイトを経験している。もっとも辛かったのは印刷工場のベルトコンベアでの仕事。逆に続けられたのはコールセンターの仕事だったとか。コールセンターにクレームの電話をかけて、津田健次郎の声で対応されたら驚くだろう。

 転機がやってきたのは29歳のとき。人気アニメ『遊☆戯☆王デュエルモンスターズ』で風間俊介が演じる主人公のライバル、海馬瀬人役に大抜擢されるのだ。

次の記事に続く 「あんた、本当に頑固ね。尖ってる!」極貧生活→30代で声優としてブレイク…津田健次郎(54)を支えた“大先輩の言葉”《『あんぱん』に出演》

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