大ヒットアニメ『涼宮ハルヒの憂鬱』(2006年)の朝比奈みくる役などで知られる声優・後藤邑子さんは、2000年代のアイドル声優ブームの渦中にいたひとり。
当時、声優がキャラクターを演じながら、歌って踊るイベントが注目を集め、アニメ人気との相乗効果により、一大ブームへと発展した。キャラクターソングがCDランキングの上位を占め、彼女自身も武道館のステージにも立った。
そんな人気絶頂の2012年、彼女は緊急入院し、無期限の活動休止を発表。病名は「全身性エリテマトーデス」。いわゆる“難病”である。
医師からは余命を宣告されながらも、病床からブログを通じてポジティブなメッセージを発信し続けた。およそ2年の入院生活を経て、奇跡的に声優業にカムバック。あれから10年、いま、自身の病気や活動についてどのような思いを抱いているのか、話を聞いた。
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最初のきっかけは「中学3年生の夏、止まらなかった鼻血」
――「全身性エリテマトーデス」とはどのような病気でしょうか?
後藤邑子さん(以下、後藤) 自己免疫疾患のひとつです。本来、免疫というのは外から入ってきたウイルスなどの外敵と戦うものですが、それが自分の体の細胞を攻撃してしまう病気です。
血液だったり、臓器だったり、あるいは皮膚だったりと、どこを攻撃するのかわからないので、「全身性」といいます。原因は、まだハッキリとは突き止められていないようです。
――病気が発覚したのはいつでしたか?
後藤 2012年に倒れて入院し、そのときに検査してわかりました。
もともと私は別の自己免疫疾患、特発性血小板減少性紫斑病(血小板に対する「自己抗体」がつくられることで、血小板が破壊され、出血の危険が高まる病気。国が指定する難病の対象)というのを長く患っていたので、その症状がひどくなったのかと思っていたら、別の病気がはじまっていたことがわかり、自分でも驚きました。
――紫斑病のほうは、いつからでしたか?
後藤 中学3年生の夏からです。それまでは全然、普通だったんですよ。運動だって得意なくらいで、陸上部にバレーボールにと、部活に明け暮れていました。
――病気に気づいたきっかけは?
後藤 部活の最中、鼻血が出たときに、いつまで経っても止まらなかったんです。そのうちに鼻血が出る回数が増えていき、そのたびに2時間流れ続けたりするので、「おかしいな?」と思うようになりました。
ある朝、学校に行く前に鼻血が出て、そのときは3時間経っても、4時間経っても止まりませんでした。近くの病院に行ったら、すぐに大きな病院を紹介され、紫斑病であることがわかり、そのまま入院となりました。