2006年のアニメ『涼宮ハルヒの憂鬱』は、エンディングテーマ「ハレ晴レユカイ」がオリコンチャートの上位を席巻するなど、まさに社会旋風を巻き起こすほどの大ヒットになった。

 キャラクターを演じた一人一人がスターダムを駆け上がっていく。朝比奈みくる役の後藤邑子さんもその一人だった。

 順風満帆に見えた彼女だったが、病気は確実に進行していた。

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後藤邑子さん (撮影=橋本篤/文藝春秋)

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アニメが5本、ラジオが6本、ゲームも録りながら、週末はイベント。合間にレコーディング、撮影…

2006年、『涼宮ハルヒの憂鬱』当時の後藤さん(後藤さん提供)

――当時の『涼宮ハルヒの憂鬱』界隈の盛り上がり方はすごかったですね。「あ、売れてるんだ」と実感したことはありましたか?

後藤邑子さん(以下、後藤) 武道館にポップアップ(舞台の下から飛び上がる)で登場してましたからね(笑)。夢にも思わなかった景色です。なぜ自分がここにいるのか分からないまま、ただすごく楽しかったです。

 これほどのタレント活動は、事務所としても前例のないことだったので「イベントがすごく多い! 海外でも歌うんですか!? マネージャーは誰が行けます?」とバタついていました。

2007年5月、台湾のイベントの際の後藤さん(後藤さん提供)
2007年7月、アメリカのイベントの際の後藤さん(後藤さん提供)

『涼宮ハルヒの憂鬱』という作品は、スタッフと声優がお互いに意見交換をできるような、とても距離の近い現場でした。

 あるとき、収録現場で、共演者の小野大輔くんが「最後のダンス、ちょっと覚えたんだよ」と言って、番組のエンドロールでキャラクターたちが踊るダンスを真似したんです。それを見た制作陣が「これ……イケるんじゃね?」という雰囲気になって……。私としては、小野くんに「なんてことしやがる……!」と内心思いましたけど(笑)。

 でも、結果的に、番組エンディング曲「ハレ晴レユカイ」は音楽チャートの上位に入り、私たちは武道館やアリーナのような、大きなコンサート会場のステージにもどんどん上がるようになっていったんです。

――そこから一気に「売れっ子」になるわけですが、いちばん忙しいときはどういったスケジュールでした?