NHK連続テレビ小説『あんぱん』の中盤を支えたのが、主人公・のぶ(今田美桜)の上司・東海林明編集長を演じた津田健次郎だ。舞台役者としてキャリアをスタートさせ、今やトップ声優として活躍、俳優としても脚光を浴びている。一方で、ブレイクまではライフラインが止められるほどの貧乏生活も経験。転機となったのは……。(全2回の2回目/はじめから読む

声優・俳優として活躍する津田健次郎 ©時事通信社

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 津田健次郎は24歳のときにあだち充原作のアニメ『H2』のオーディションに合格し、声優デビューを果たした。だが、その後も不遇の時代は続いていた。転機がやってきたのは29歳のとき。人気アニメ『遊☆戯☆王デュエルモンスターズ』で風間俊介が演じる主人公のライバル、海馬瀬人役に大抜擢されるのだ。

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 このとき、最後に残った3人の候補から津田を選んだのは録音監督を務めていた三ツ矢である。「低くてお腹に響く声が欲しい」「暗い印象だけど華のある子がいい」という理由だった(『雄二と大輔の声優コレクション』2021年7月13日)。

津田健次郎のインスタグラムより

「あんた、本当に頑固ね。尖ってる!」

 三ツ矢に厳しく指導された津田だったが、印象的なエピソードとして三ツ矢に呼び出されたときのことを繰り返し語っている。津田はこう言われたという。

「あんた、本当に頑固ね。すごく頑固! 尖ってる! その生き方は本当に苦労するし大変だけど、あなたがそれを貫きたいなら頑張りなさい」

津田の声優デビュー作アニメ『H2』では主人公の父親役を演じていた三ツ矢雄二 ©橋本篤/文藝春秋

 津田を抜擢した理由といい、その後のアドバイスといい、三ツ矢はさすがの慧眼だったといえる。その直後、『テニスの王子様』に出演してブレイクした津田は、人気声優としての地位を確立していく。

声優として順調にキャリアを積むが…

 声優として順調にキャリアを積み重ねていく中、顔出しの俳優の仕事も続けていたが、思うようにはいかなかった。

 ドラマ『池袋ウエストゲートパーク』には、長瀬智也を面接するホスト役で出演。「お客様をバターにしちゃうの」という謎のセリフを与えられている。日曜劇場『JIN-仁-』では、大沢たかおと山本耕史が勤務する大学病院の医師を演じた。病状を説明するまともな役だったが、出番はこれだけである。