NHK連続テレビ小説『あんぱん』で、ヒロイン・のぶ(今田美桜)の妹・蘭子役を好演している河合優実。とりわけ印象的だったのが、第38話だ。

「子供たちにもそう教えちゅうがかや? 兵隊になって戦争に行きなさい、命を惜しまずに戦いなさいって。豪ちゃんみたいに名誉の戦死をしなさい、戦死したら、立派やって言いましょうって」

 想いを確かめあった豪(細田佳央太)が戦死し、悲しみに暮れる蘭子が、軍国教育を行う姉に詰め寄る場面。それまで口数が少なく、感情を露わにしてこなかった蘭子が、のぶに激しい言葉を浴びせる。セリフに頼らずに感情を表現する“静”の演技から、鬼気迫る“動”への変化は見事というしかない。

ヒロイン・のぶ(今田美桜)の妹・蘭子を演じる河合優実(朝ドラ『あんぱん』公式Instagramより)

一際目を惹く『あんぱん』での演技

『あんぱん』のキャスティングが発表された当初、筆者は「主人公の妹役は、河合優実にとって役不足ではないか」と感じていたが、第38話に至るまでの一連のエピソードを見て、そのような考えは完全に覆された。『あんぱん』で一番目を惹くのは河合優実の演技――そんな声も多く耳にする。

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「時代の寵児」「時代を象徴するミューズ」「豊かな表現と圧倒的な輝き」「卓越した演技力や存在感」「新しい時代のキーパーソン」――。ここ数年の河合優実についての記事についた枕詞だ。「我々はいま、河合優実の時代に生きている」というのもあった。これらの言葉はけっして大げさではない。それだけのキャリアを積み、作品の中で輝きを放ってきた。

河合優実 ©時事通信社

24歳にして多数の映画・ドラマで高い評価を得てきた

 現在24歳にして、出演した映画、ドラマは数知れず。デビュー直後から多くの映画賞を獲得し、『あんのこと』(2024年)、『ナミビアの砂漠』(2024年)、ドラマ『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』(NHK、2023年)などの主演作は軒並み高い評価を得てきた。

 日本アカデミー賞最優秀主演女優賞にも輝いたが、彼女にとってはほんの通過点でしかないだろう。俳優・河合優実はどのように生まれ、育ってきたのか。彼女の言葉からあらためてたどってみたい。