「世間は怖いぞぉ。妬んだり、僻んだりして、いろんなことを言われる。お前の志をへし折ろうとする奴もいる。そんな奴に絶対に負けるな。負けるなよ」
NHK連続テレビ小説『あんぱん』の中盤を支えたのが、主人公・のぶ(今田美桜)の上司・東海林明編集長を演じた津田健次郎だ。
ヒロイン・のぶの上司役を熱演
熱くて、まっすぐで、少しおっちょこちょいで、仕事に誇りを持ち、何より部下思い。戦後編から登場した東海林は、戦中編の陰鬱な雰囲気を一変させるキーパーソンとして描かれていた。のぶの新しい人生をともに切り開き、嵩(北村匠海)に仕事でマンガを描かせ、若い二人に大切なことを伝えて支えるという『あんぱん』全編を通しても重要な役どころを津田は見事に演じてみせた。「~にゃあ」という土佐弁のイントネーションも耳に残る。
冒頭のセリフは、東京に出ていくのぶを激励したときのもの。『あんぱん』の中盤随一の見せ場だったと筆者は感じている。博多大吉もNHK『あさイチ』で「全国の学校で流すべき」と絶賛していた。
声優・俳優として活躍
毎クールのようにドラマに出演し、現在放送中の日曜劇場『19番目のカルテ』(TBS系)にも第3話のゲストとして印象的な演技を見せた現在54歳の津田健次郎を「遅咲き」と言ったらファンに叱られるだろう。
なんといっても声優としてのキャリアがすごい。『呪術廻戦』の七海建人、『極主夫道』の龍、『ゴールデンカムイ』の尾形百之助をはじめ、特徴のある低音を活かして有名作品で演じたメインキャラは枚挙に暇がない。近年もドラマ出演と並行してアニメへの出演も変わらず多い。
肩書は「声優・俳優」だが、多方面で活躍中だ。2023年には写真集を発売して、たちまち重版。女性誌『anan』の表紙を声優として初めて飾った。2019年に『ドキュメンターテイメント AD-LIVE』で映画監督デビューを果たすと、2022年には短編映画アクターズ・ショート・フィルム『GET SET GO』で監督、脚本を兼ねた。
「50代になってようやく、若い頃に『こうなっているといいな』と思い描いていた自分に近づいたような気がしています」(婦人公論.jp 2025年6月27日)
出世作『遊☆戯☆王 デュエルモンスターズ』の海馬瀬人の決めゼリフにちなんで「今まさに俺のターンですね(笑)」と冗談めかしてコメントしたこともあった(ORICON NEWS 2023年6月28日)。「俺のターン」を迎えている津田健次郎の歩みを振り返ってみたい。





