親たちが学校への支出を止められない「悲しい理由」

 しかも、学校に行かないからといって、学校に関わる支出が減るわけではありません。ときどき学校に行くような子どもであれば、給食費は支払い続けなければならないでしょうし、副教材などの購入費も必要です。修学旅行の積み立てを1年次からしている学校も多く、これもなかなかやめるわけにはいきません。

 さらに、私立校に通っている場合には授業料も必要です。授業料を払わなければ、退学になり、公立校に転校することになります。せっかく受験をして(当然、そのために塾などにもお金を使っています)、通っている学校をやめてしまってよいものか、でも、行けていないのに授業料を払い続けるのももったいない、などお金にまつわる親の逡巡は少なくありません。

学校に行かなくても、親たちはさまざまな費用を払わざるを得ない 画像はイメージ ©yamasan/イメージマート

 実際には、給食費などの費用に関しては、支払いを拒否しようとすれば拒否できないわけではありません。しかしほとんどの親はこれらの支払いをやめられません。やめてしまうと、もう自分の子は学校に行って給食を食べることも、修学旅行に行くこともないと認めてしまうことにもなるからです。

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 また、私立校で授業料を払わないということは、退学・転校を意味するだけではなく、これまでの受験のための努力も無にしてしまうように思えてしまいます。なにより、これらの支払いをやめてしまうということは、子どもに「どうせあなたは学校にいかないんでしょ」という思いを突き付けてしまうことになってしまうのです。

 ある不登校の子どものお母さんが、中学校入学を目前にした3月に、中学校の制服やジャージを買いました、と暗い表情で報告してくれました。

 小学校5、6年生でも数回しか学校に行っておらず、中学校もおそらく行かない、制服を着るかどうかもわからない。でも、だからといって制服を買わなかったら、「中学校に行かない」ということを後押ししてしまう気がしてしまう。そんな逡巡のなか、買わないよりは……と思って、数万円もする制服などを買ったと言っていました。

 結局その子がその制服を着たのは2回、中学校の入学式と卒業式のときだけでした。それでも、不登校の子どもの親は学校に関する支出をなくすことはできないのです。

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