ここ数年、急増している小中学生の「不登校」。文部科学省によると、2023年度は10年前と比較して約3倍の約34万人にのぼった。
子どもが不登校になり、空中分解してしまう家庭も少なくない。夫が妻を「お前が甘やかすから」と責めたり、反対に「任せる」と丸投げしたりといったケースが挙げられる。とはいえ夫たちも葛藤があるようだ。青年心理学を専門とする髙坂康雅氏による新著『不登校のあの子に起きていること』(筑摩書房)より一部抜粋し、お届けする。(全3回の3回目/最初から読む)
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本書籍内では、子どもが不登校になることで、3種類の孤立や経済的な負担が生じることを説明しています。これらのうち、経済的な負担は家庭全体のことですが、3種類の孤立を経験するのは主に母親に偏っているのが現状です。
父親が仕事を辞めた、働き方を変えたという話を聞くことはまれです。共働きが主流になったとはいえ、家計の主な収入を賄っているのは父親であることが多いため、父親はそう簡単に仕事を辞めるわけにはいかないからです。
また、父親は日中働いているため、父親自ら不登校に関する情報を収集することが難しく、帰宅後に、「学校は何て言っている?」「これはどうなっている?」などと母親(妻)を情報源にすることもあります(ときどき、どこからか聞きかじったような情報を自慢げに伝えて、母親を混乱させることはあるようです)。
先ほど説明したように、母親はさまざまな感情を抱いていますが、父親がそれを理解し、受け止めている家庭は少ないです。多様な感情を抱いてしまう母親の状況を、父親は理解できていないようです。
