「学校に行け!」無理やり車に押し込む父親も……

 子どもが不登校になったときに、父親が感じる感情はあまり多くはありませんが、よくみられる感情としては不満と苛立ちがあります。子どもが学校に行かないことに対して不満を抱き、「学校に行け!」と怒鳴ったりします。

 なかには、無理やり車に押し込んで、学校に連れて行こうとする父親もいます。父親の方が体が大きく腕力があるので、脅したり、強引に連れて行ったりすればどうにかなると思っているのかもしれませんが、そんなことをしても、子どもが泣き叫ぶだけで、学校に行くようにはなりません。それがさらに父親の不満と苛立ちを高めます。

 そしてその苛立ちが向かう先は、母親(妻)になります。「どうして学校に連れて行かないんだ!」「お前が甘やかすから、不登校なんかになるんだ!」などと、子どもが不登校になった原因を妻に押し付け、「あとはやっておけ!」と言わんばかりに、仕事に行ってしまう。

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 母親は3種類の孤立に耐えながら、子どもの対応をしているのに、そんな母親の境遇を理解することができません。もちろん、母親はそんなことを言われて黙っているわけがありませんので、子どもの不登校を機に夫婦関係が悪化……ということもよく起こることなのです。

子どもの不登校によって家庭が空中分解してしまうケースも少なくない 画像はイメージ ©siro46/イメージマート

「亭主関白」や「頑固おやじ」は減ったものの……

 人はどういうときに不満や苛立ちを感じるでしょう。不満や苛立ちは、自分がこうしたい、こうでありたいという希望や理想をもっているにもかかわらず、現実ではそれが実現しないときに生じる感情です。おなかが空いているのに注文した料理がいつまでも出てこないからイライラしてしまう、と、こういうことです。

 とはいえ、かつての「亭主関白」や「頑固おやじ」のような存在は今の家庭には少なく、多くの父親は子育て・育児に協力的で、子どもの成長や教育にも関わろうとしています。しかし、家計を維持するためには仕事に時間と体力を使わなければならないため、どうしても子どもと関わる時間や夫婦でゆっくりと話す時間を取ることができません。

 そうすると、父親の知らないところで子どもが不登校になっていたり、学校との関わりが決められていたりすることになります。子どもが不登校になりそうな兆候がみられたり不登校になり始めたりしたところできちんと気づき、もっと父親として関わろうという思いはあるのに、そんな時間をとることができず、気がついたら蚊帳の外なんてことも珍しくありません。

 そんな状況で、子どもを強引に学校に連れて行こうとしたり、母親(妻)に「どうにかしろ!」と言ったりするのは、蚊帳の外に置かれた自分の存在を知らしめようとするための、必死の抵抗なのかもしれません。