外国人投資家による爆買いで…

 日本の不動産マーケットは世界でも稀にみる、自由で開かれたマーケットだ。外国人であってもほぼ自由に不動産が売買でき、その所有権は強固に守られている。特にコロナ禍以降の激しい円安によって、日本の不動産は世界的にみて割安と映り、外国人投資家によって不動産の爆買い現象が生じている。

東京・晴海周辺の高層マンション(晴海大橋より) ©momo.photo/イメージマート

 購入対象は都市部のタワマンに限らず、オフィスビルやホテル、農地や山林、水源地などに及んでいて、有事の際に大きな問題を引き起こすことが懸念されている。

 参議院議員選挙時、日本人ファーストを掲げる参政党などは外国人による不動産所有は認めないとの主張を繰り返した。また1925年に制定され、現在も有効とされる外国人土地法を持ち出し、相互主義の考えに基づき、相手国で規制する内容と同等の制限を設けるべきとの意見もある。たとえば中国では外国人による不動産の所有は認められていないので、日本でも同様とすべきとの意見だ。

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サービス貿易の自由化を進めるための国際ルール「GATS」

 いっぽうで外国人による不動産購入に制限をかけられない大きな理由として政府が掲げるのが、1995年に日本が加盟したGATS(サービスの貿易に関する一般協定)の存在がある。GATSはサービス貿易の自由化を進めるための国際ルールであり、加盟国は自国のサービス市場を他国に開放する義務を負い、相手国に対して「内国民待遇の保障」を行うことを課している。

 この協定では一部の分野ではこの保障を「留保」できるとされていたが、当時の日本国政府は不動産を留保していなかった。当時はまさか30年後に日本の不動産が爆買いされるなどと想像しなかったのだろう。そのため今となって外国人の不動産取得に日本が規制を行うと、加盟国からGATS違反として訴訟を受けるリスクがあるという指摘だ。

 ただし協定には安全保障上の例外規定があって、いったん定めたルールであっても安全保障上の理由があれば留保でき、実際にシンガポールやインドなどは締結時に対象としていなかった不動産についてあらためて留保している。