外国人による日本の不動産爆買い問題がさきの参議院議員選挙で大きく取り上げられるようになって以来、世間を騒がせている。

 最近では、大阪市浪速区や東京都板橋区の賃貸マンションオーナーが外国人に代わった途端に借家人に対して法外な家賃引上げを通告し、退去を余儀なくされている事例が報告されている。

借家人側に有利である「借地借家法」

 日本では借地借家法(旧借地法・借家法を統合)により、建物の賃貸借関係が普通賃貸借契約であれば、必ずしも大家側の要求通りに賃料改定に応じる必要はない。通常は期間2年の賃貸借契約が締結され、更新時に新たな賃料については協議できることになっているが、大家側が値上げを要求する際、借家人が納得しない場合には、大家側はその理由を説明し納得してもらう必要がある。借家人が納得しない場合には、裁判所で争うことになるが、借家人側に有利な判決が出る場合が多く、裁判費用等を考えると大家側も裁判をしてまで解決しようとは考えずに現行賃料で妥協することが多いのが実態だ。

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写真はイメージ ©WavebreakMedia/イメージマート

 日本の借地法・借家法は1921年制定の古い法律で、戦時下の1941年に改正され、大家側は正当な事由がない限り、借家人との間の賃貸借契約の更新を拒めない内容になっている。背景には戦後、多くの男性が戦争で亡くなり、稼ぎ手を失った多くの未亡人が借家から追い出されるのを防ぐ意味合いがあったものだ。1999年にあらたに定期借家法が制定され、定期借家契約を締結していれば、期限終了で契約は終了し、立ち退きさせることができるようになったが、現状、国内の多くの賃貸契約が普通借家契約になっているのが実情だ。

 ところが外国人オーナーはそうした実態を知らないケースが多いので、投資した不動産の運用利回りを上げようと、物件取得後は直ちに賃料値上げを通告し、嫌なら立ち退かせることができると考える。値上げを拒み、退去しない住民に対してはエレベーターを休止して、嫌がらせをするなどの事例も報告されている。

「来月から家賃を倍にする。嫌なら出て行ってくれ」

 香港在住の知人が先日、私の事務所に来た際、こんな愚痴を呟いていた。

「先日の夜、玄関の扉を叩く音がするので何事かと出たら大家から『来月から家賃を倍にする。嫌なら出て行ってくれ』と通告され頭を抱えています」

 聞くところによれば香港では家賃が急騰していて、借家人は特に保護されていないために、家賃に納得できないならば出ていかざるを得ないとのことだった。日本でのトラブルの背景にはこうした互いのルールの違いによるものもある。

 こうした指摘について政府は、外国人にもっと日本の法律や文化、風習を理解させるように努めるなどとしているが、これはまさに「やっている」感を出しているにすぎないようにみえる。