幸せは気づいたもの勝ち
本書の中心にはブータンがいる。
そして彼女を取りまく同級生たちが登場する。ある時期になると同級生は道が分かれていく。独身、既婚に分かれ、既婚はさらに子持ち、子なしに分かれる。似たような境遇同士がくっつき、境遇が変わればまたグループ編成も変わっていく。
そして境遇を測りあう。決して口には出さないが、どちらがより幸せか、あるいはそうでないか。
不思議なことに、みな自分の不幸せには敏感だ。
売れ残りの寂しい人生だと嘆いたり、高望みしたくないけど実は夢を見たがったり、人から奪った幸せを失うことに怯えたり、子どもがいないことを引け目に感じたり……。
でも自分の幸せには、なかなか気づけない。
裏返せば、幸せは気づいたもの勝ちということ。
名は体を表す、というが、ブータンが綽名のように幸せ度高めに生きるには、なかなかキツイことが多い人生だろう。紗季の言うように「幸せぶって」生きていたのかもしれない。
でも幸せぶることから、幸せは見つかる。
不幸せを蔑んでいたら、そんな顔になってしまうから、ブータンは「笑顔」で居続ける。
幸せは目には見えないけど、不幸せを決め込んだ人は多分幸せには見えない。
誰よりも幸せ度高いブータン。幸せは経済的な豊かさもあるかもしれないが、それだけが幸せではない。
たとえばブータンみたいな友達がいることは幸せと呼べる。たとえ会えなくても、幸せな時間は何度も思い出せる。思い出して笑ったり泣いたりできる、そんな友達がいることは、これ以上ない幸せだと思う。
