誰にも似ていなかった、堀北真希の“美しすぎる猫目”
あらためて出演作品を振り返ると、堀北真希のちょっと非現実的なほど美しい猫目は、少女マンガ的なぶっとび展開にもピタリと合った。また、彼女が活躍した平成中期は、アイドル的でありながら、実力派としての将来も期待できる10代の女性俳優が続々登場し、そのブームにも乗った。同じ時期に才能を開花させた面々には石原さとみ、北川景子、戸田恵梨香、新垣結衣、沢尻エリカ、上野樹里がいたが、その誰とも被らない。そして「ギャル」「クール」「闇」「素朴」「非現実」、堀北はすべてに対応できた。逆に言えば、すべてを備えた雰囲気を持つ彼女にしかできない役があった。
「花ざかりの君たちへ~イケメン♂パラダイス~」はその最たるものだろう。堀北が演じた芦屋瑞稀は、性別を偽って男子校へ編入する。キャスティングを間違えれば「ありえんな!」と恥ずかしくなるところだが、「男子校に混じってもバレない男装」にちゃんと見えた。
そして視聴者は「小栗旬、生田斗真、水嶋ヒロ、岡田将生といったイケメンに囲まれている堀北真希に自分を投影し盛り上がる」のではなく、堀北真希を好きになった。これはすごいことである。
堀北真希の成長と重なる『ALWAYS 三丁目の夕日』
「イケパラ」もいい。「野ブタ。」もいい。しかし堀北真希の代表作となると、彼女の俳優としての成長とリンクした映画『ALWAYS 三丁目の夕日』3部作ではなかろうか。彼女は星野六子、六ちゃんを演じたのだが、これが素朴で素晴らしい。もぎたての林檎のようなのだ。
1作目は2005年公開だが、撮影はもう少し前だと考えると、堀北はデビュー1年目くらい。なのに、ものすごくうまい。正直、彼女の作品の中で、一番「俳優魂」を感じるのは、『ALWAYS 三丁目の夕日』の1作目である。そもそも母親が青森県出身で、堀北も東北弁が得意ということで白羽の矢が立ったそうだが、その矢は見事ど真ん中に当たった。彼女が演じた素直でしっかりものの六ちゃんは、「三丁目」の人気者となり、『ALWAYS 三丁目の夕日'64』は、彼女の結婚エピソードを軸に描かれている(2012年)。
堀北自身も、この役について、
「自分自身の記憶と六ちゃんの記憶がリンクするところもあって、“私、青森から上京してきたんだっけ?”って思うこともあるくらい(笑)」
と語っている。
できればもう一度群像劇で、彼女がキーパーソンとなるドラマを見たいが、可能性はゼロに近いだろう。
しかしそれでこそ、堀北真希なのである。せめて、作品の中の彼女に会いに行こう。

