地元住民の不安に応じた歴史的デモフライト
この日は4機のF-35Bが自力飛来の予定だったが、グアム島アンダーセン空軍基地での点検作業が遅れ、3機のみとなった。それでも広報幹部からの事前の知らせでは各々1機ずつが垂直、短距離、通常と異なった姿勢で着陸するという。
これは地域住民にF-35Bという新機種が配備されるにあたり、その騒音も経験、測定もしていただけるようにという配慮からである。
不肖・宮嶋もF-35Bの短距離着陸は三沢基地で見たことはあるが、垂直着陸は初めてである。
しかし、ここ新田原基地は現在もF-15戦闘機が配備された305飛行隊のホームである。先日不運にも愛知県犬山市のため池に墜落したT-4練習機に搭乗して殉職された2名のパイロットも、この305飛行隊所属だった。
それだけに日夜、F-15戦闘機の双発のジェットエンジンをフルスロットルで発進、国籍不明機に対するスクランブルに訓練にと飛び交っている土地柄で、自衛隊に対する理解も深い。
それでも初めて日本が手にするSTOVL(垂直着陸、短距離離陸)機である。その性能と国防に対する効果を地元住民に理解してもらうためにもとの3パターンでのデモフライトなのである。
いよいよ着陸の瞬間が…
霧雨に曇る雲間に姿を見せた1番機は、基地の周りを反時計回りに旋回の途中ですでにランディングギア(脚)を下し、可変排気ノズルを真下に下げ、リフトファンも全開の垂直着陸モードである。
これこそがF-35Bだけが見せるシルエットである。速度も徐々に落とし、垂直着陸ポッド上空にいたって空中で停止、ヘリで言うホバリング状態になった。
「なんや……言われてたほどうるさあないやん」一番うるさいと言われてた垂直着陸モードでこの程度かいな……音をお聞かせできない文春オンライン上で申し訳ないが、それが不肖・宮嶋の第一印象であった。


