戦後80年の節目に、ついに我が国に最新鋭ステルスSTOVL戦闘機「F-35B」が自衛隊機として配備された。高い性能を誇る一方で、従来の戦闘機とは異なる多くの課題も抱えるこの機体は、日本の空と海を守る新たな防衛の要として大きな関心を集めている。

 報道カメラマン不肖・宮嶋は、F-35Bが宮崎県・新田原基地に姿を現した歴史的瞬間を目撃。その模様と今後の展望を豊富な写真とともに詳しく紹介する。(全2回の2回目/前編を読む

撮影=宮嶋茂樹

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最新鋭ステルス戦闘機「F-35B」の最大の特徴とは?

 さてと、ここでもうちょい、説明させていただきたい。実はF-35のA型、これまたB型と同じ通称「ライトニングⅡ」はすでに2017年から航空自衛隊三沢基地に配備されている。第301、302と2個飛行隊も編成され、北海道周辺や日本海上での領空侵犯の恐れのある国籍不明機などにスクランブルもかけており、「日の丸F-35」はすでに存在しているのである。

三沢基地の日の丸F-35A

 しかし、今回、新田原基地に配備されたのは同じF-35でもB型、それは血液型のごとく見かけは似て……ないか……全く別もんというてもええくらいなのである。

 さらにF-35ファミリーはC型も存在し、それは米海軍のみに配備されカタパルトから発出される原子力空母専用の艦載機である。

デスバレーを飛行するF-35C

 A、B、C型ともロッキード・マーチン社製、今回、(にゅう()(ばる基地に配備された3機のF-35Bもアメリカ、テキサス州フォートワースのロッキード・マーチン社工場で製造され、ハワイ、グアムと経由して新田原基地に飛んできたのである。なお三沢基地のA型は三菱重工のライセンス生産である。

 

 それで、このB型の最大の特徴はその外見からも分るようにA、C型同様ステルス性、つまり敵レーダーにほとんど映らない……だけやない。世界唯一と言っていいステルスSTOVL機、つまり短距離離陸、垂直着陸できる「見えない戦闘機」なのである。

 垂直離着陸できる戦闘機としては「ハリアー」が有名だが、このB型ライトニングⅡはそのハリヤーより優秀かつステルス機なのである。全長250m弱の飛行甲板を有する護衛艦「かが」にも発着艦できたくらいである。

 護衛艦からだけではない。滑走路が短い我が国南西諸島の島々にも離着陸できるようになる。レーダーに映らない日本の戦闘機が護衛艦に載せられ、南西諸島の空と海を守る、イコール、今まで日本の領海、時には領空侵し放題やった中国、ロシア軍機にとっては大きな脅威となる。

ヘルメットだけで都内のマンションが買える値段

 しかし、ロシア軍や中国人民解放軍にもなんちゃってステルス戦闘機は存在する。そんなんとF-35BとはSTOVL機能以外にも、大きな違いがある。それが実戦経験とその戦果である。

 実際、2018年、米海軍強襲揚陸艦「エセックス」から発艦した米海兵隊のF-35Bはアフガニスタンでタリバン拠点の空爆に成功している。

 

 F-35Bの特徴は機体だけではない。その装備で意外にも高価なのが、フライト・ヘルメットなのである。

 今回はるばるアメリカ本土から新田原基地まで飛んで機体を届けてくれた米海兵隊パイロットが手に抱えて降りてきた、あの何の取り柄もなさそうな普通のフライト・ヘルメットが実は2000万円、いやいや今のこの円安では5000万円くらいするんちゃうかというのである。

 もはやヘルメットどころか都内のマンションが買える値段や。