書きながら定まっていったキャラクター像

――また、「下町ロケット」シリーズはメディアミックスでも多くのファンを獲得しました。2011年には第1作『下町ロケット』がWOWOWの連続ドラマWで映像化され、2015年と2018年にはTBS日曜劇場で全4作の物語がドラマ化。TBS版は主要キャストも継続で出演し、キャラクターが定着しました。

池井戸 小説を書くとき、登場人物のキャリアなどはおおまかに設定しますが、とくに姿形については最初に造形する必要がないんですよね。主人公の佃航平についても、どんな人物かは書きながら徐々に具体化していったというのが実感です。でも、TBSのドラマが放送され、『ゴースト』を書いているあたりからは、佃は僕の脳内でも完全に阿部寛さんの姿で動いていました。大福を頬張りながら、「よーし、やるぞ!」と(笑)。

――『ゴースト』『ヤタガラス』が刊行されてから7年。佃製作所は、今ならどんな危機と向き合っていると想像されますか?

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池井戸 今なら、EVでしょうね。電気自動車などが普及しEV化が進んでいく中で、小型エンジンを作っている佃製作所のような会社がどう生き残るか。ただ、トランスミッション開発に携わった佃なら、宇宙や医療、農業ではない、何か別の分野で力を発揮することも可能ではないかと思います。

 次のステージとして、僕には漠然と「海」が浮かんでいますが……「下町ロケット」シリーズを含めて小説のアイデアは、常に機械式駐車場のように頭の中をぐるぐる廻っているので、いつ何が出てきて動き出すかは自分でも予想できません(笑)。

池井戸潤さん ©文藝春秋

シリーズを読破するなら、Kindleは最強!

――「下町ロケット」シリーズ新装版は、電子書籍版も同時再リリース。単行本に加えて、全4作を収録した合本も新登場します。

池井戸 僕はAmazonのKindleの電子書籍リーダーをずっと使っていて(Kindle Paperwhiteのデバイスを手に)『下町ロケット』でも4冊ぶんをこの薄さと軽さで持ち歩けるのは、確かにメリットですね。僕もトートバッグにそのままポンと入れて持ち運んでいます。移動中に読んだり、寝転がって読んだりするときも軽くていい。光の反射を抑えたE-inkディスプレイなので画面が見やすくて目に優しいし、バッテリーの保ちがいいのもありがたいです。

 

――紙の書籍と電子書籍、池井戸さんはどう使い分けておられますか?

池井戸 たとえば、実用書や法令集などの実務書は、ノウハウを持ち歩けるという点で電子書籍版に利がありますよね。あと、コミックのように何巻も続刊があるものは、全巻一気に買ってデバイスに入れておけば、いつでも読めます。

 Kindle電子書籍リーダーの辞書機能も便利。僕の小説にはルビが多く振ってありますが、これは、小学生の読者にも読んでもらいたいから。Kindle電子書籍リーダーの辞書機能や単語帳登録を使えば、もっと読みやすくなるでしょう。

 一方で、「これは紙の本でほしい」という本も、やっぱりある。電子書籍で読んだものを、わざわざ紙で買い直したこともあります。本は装幀や紙の手触りなどの身体性も大事な要素だと思っているので、本を出版するときにはその辺りにもこだわっています。

――ちなみに、最近、Kindleコンテンツで購入したタイトルは?

池井戸 『新版 平家物語 全訳注 全四冊合本版』(杉本圭二郎校註/講談社学術文庫Kindle版)。実は全部をきちんと読んでいなかったので、いつか読み直したいと思っていたんです。紙の本を持ち運ぶのは大変ですが、Kindle電子書籍リーダーなら手軽。現代語訳も注釈もすぐに参照できて、便利ですよ。

下町ロケット (文春文庫)

池井戸 潤

文藝春秋

2025年9月3日 発売

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