またパスワードか! 一体いくつ作ればいいんだ
このあたりから、わけがわからなくなってきた。パソコンはパスワードはひとつだけなのに、こんな小さいスマホを使うのに、どれだけのパスワードを使わなくちゃならないのか。こんなに面倒くさいのなら、スマホなんていらない。そう思いながらもすでに後戻りできない状態になっているので、しぶしぶパスワードを考えた。それを渡すとまた同じ手順で彼はメモ書きを渡し、パスワードを思い出すためによく使われる、初めてのペットだの、好きなバンドだの、両親の出会ったところなどの質問に、適当に答えを書いて彼に渡した。するとまた同じ手順でメモ書きを私に渡し、
「これは大切ですから、絶対になくさないでくださいね」
と再々度念を押した。いったいスマホひとつ使うために、なくしてはいけないものがいくつあるのか。そんな複雑なものは私はいらん! と大声を出したくなったが、友だちは、
「いろいろとパスワードがあって、面倒くさいのよね」
とおっとりというので、これは仕方がないのかと自分を収めて、とにかくなくしてはいけないメモをバッグに入れて、膝の上に抱えていた。
私が渡したメモによって、彼はスマホの設定をしてくれているようだった。そしてやっと終わったと思ったら、
「LINEパスワードをお願いします」
というではないか。
(またパスワードかっ! いったいいくつパスワードを作ればいいんだ。私はさっき自分で考えた、最初のメールアドレスとパスワードでさえ、もう忘れてるぞ!)
と心の中で叫びながら、
「はあ、またパスワードですか……」
と力なくいうと、友だちは、
「LINEパスワードは大事なの。そうしないとツムツムができないから」
というのだ。
「私、ゲームはするつもりはないわよ」
「ツムツムはしたほうがいいの。私がやり方を教えてあげるから。パスワードはさっきのパスワードの大文字のないやつでいいじゃないの」
LINEパスワードも彼女が決めた。
「はあ……」
そしてそれを彼がメモ書きして私に渡してきたので、
「絶対になくしちゃいけないんですね」
と自ら念を押してバッグの中に入れた。
後編は、群さん初のショートメールにチャレンジです!(続く)