『そこのみにて光輝く』(14年)『きみはいい子』(15年)の呉美保監督と脚本家・高田亮が、最新作『ふつうの子ども』で、三度目のタッグを組んだ。簡単そうで難しいふつうを、子どもの自然な姿を描くことに長けた呉監督はどう描いたのか。
子役オーディションで重視したこと
──長年「ありのままの子どもを描きたい」と思っていたそうですね。
はい。10年前、高田さんと一緒に作った『きみはいい子』という作品の公開直前に出産したんですけど、子育てを経験してみて、自分がこれまで観てきた映画のなかに、子どもならではの短絡的で激情的な姿を味わえる作品があまりないことに気がつきました。
映画には何らかのテーマが必要ですが、どんな問題を抱えていても、その日その瞬間を楽しむのが子どもです。自分の作品も含め、これまでの映画に出てくる大人の目を通したステレオタイプの子ども像ではなく、多面的で、もっと子どもたちの豊かな姿を描いた作品を作ってみたい。そう思っていた時に、プロデューサーの菅野(和佳奈)さんと高田さんから本作のお話をいただき、この企画なら自分の夢が叶えられるのではないかと思いました。
──ふつうを演じられる子どものキャスティングは簡単ではないのでは?
メインの3人をはじめ、クラスメイトは全員、約半年をかけたワークショップ形式のオーディションで選びました。
子役のオーディションでは、頑張ってセリフを覚えてくる子や、上手なお芝居をする子が多いのですが、あまりそこは重視していません。むしろ頑張って覚えてきたセリフが言えなくて「あっ……」と黙ってしまうような子のほうに個性を感じるので、そういう子たちのなかからキラッと光る存在を探しました。
──その個性が光っていたのが主演の3人だった?
そうです。3人のセレクトは重要だったので、過程もよく憶えています。主人公の上田唯士を演じた嶋田鉄太くんは、前作『ぼくが生きてる、ふたつの世界』(24年)で、主人公の幼少期役でオーディションに来てくれたのが最初の出会いでした。嶋田くんは、セリフも台本通りに読まず、予定調和に収まらない、ちょっと目を惹く、印象的な存在で……。前作では主人公の幼少期の友人役で出演してもらったのですが、同時進行で本作の子役も探していたので、唯士の候補として頭の片隅に置いていたんです。
三宅心愛役は最後4人まで絞れたんですが、そこから悩みました。ステレオタイプに演じてしまうと、ただの気の強い可愛げのない女の子になってしまう。一所懸命がんばっている姿に共感を覚え、何より唯士が恋をする相手として唯士との相性も考えたなかで、演技はほぼ未経験だった瑠璃ちゃんを選びました。選べなかった3人もそれぞれ本当に魅力的だったので、いつかまたご縁があったらぜひご一緒したいと思っています。


