『ふつうの子ども』で問題提起したいこと
──タイトルにもついているふつうをどう考えますか?
『ふつうの子ども』というタイトルは、菅野さん、高田さんと3人で考えました。大人はよく「ふつうはね……」などと言ってしまいがちですが、何をもってふつうというかは、実はすごく難しい問題です。それぞれが考えるふつうがあるので、本作のタイトルは、何をもってふつうというのか、という問題提起でもあると思っています。
私自身はふつうである必要はないと思っていますが、ともすれば日本は、統制された教育のなかでふつうを求められる社会です。それにはもちろん、よい面もありますが、そこからはみ出ることをよしとしない暗黙の視点があるのだということを、感じてもらえたらいいなと思います。
──ラストには希望を感じました。
本作のキャッチコピーは、「いつだって、世界は『好き』でまわってる」。唯士は、世界を救うことはできなかったけれど、好きな女の子のことは救えたんじゃないかと思っています。作り込んだ「ふつう」のなかには、ワクワクとドキドキと、身につまされる切なさを込めています。子どもにも大人にも楽しんでいただける作品だと思うので、笑って楽しんで、ちょっと考えてもらえたら嬉しいです。
写真=釜谷洋史
お・みぽ 1977年生まれ、三重県出身。『酒井家のしあわせ』でサンダンス・NHK国際映像作家賞を受賞、06年に同作で映画監督デビュー。国際的にも高い評価を得た『そこのみにて光輝く』(14年)、『きみはいい子』(15年)2作品のあと、2児の出産を経て9年ぶりの長編作『ぼくが生きてる、ふたつの世界』(24年)も国内外で高評価を得る。映画のほか、執筆活動やCMも手がけている。
INTRODUCTION
出産、育児を経て2024年に9年ぶりの長編監督作品『ぼくが生きてる、ふたつの世界』を発表した呉美保監督が、間をおかずに制作した最新作。シリアスなサスペンスからラブコメディまで手がける脚本家・高田亮と3度目のタッグを組み、オリジナルストーリーでいまを生きる子どもたちのポジティブな人間ドラマを生み出した。スウェーデン出身のZ世代の環境活動家、グレタ・トゥンベリが、アイコニックなモチーフとして作品に採り入れられている。
STORY
生き物と駄菓子が大好きな小学4年生の上田唯士(嶋田鉄太)は、作文発表で地球温暖化に警鐘を鳴らす三宅心愛(瑠璃)に心を奪われる。心愛に近づきたい一心で、環境問題を勉強し始める唯士。そんな二人に近づいてきた橋本陽斗(味元耀大)とともに、環境活動を始めるが、次第に手作りの扇動ビラを撒くなど過激な行動に出るようになる。徐々に行動がエスカレートし、ついには怪我人が出る事故が。そして唯士たちは──。
STAFF & CAST
監督:呉美保/脚本:高田亮/企画・プロデューサー:菅野和佳奈/出演:嶋田鉄太、瑠璃、味元耀大、瀧内公美、少路勇介、大熊大貴、長峰くみ、林田茶愛美、風間俊介、蒼井優/2025年/日本/96分/配給:murmur/©︎2025「ふつうの子ども」製作委員会
