1945年、原爆投下直後の長崎で、人々の命を救おうと奔走した日本赤十字社の看護師たちの手記をもとに映画化した『長崎―閃光の影で―』。長崎出身で被爆3世の松本准平監督が共同脚本も務めている。映画では、空襲による休校を機に帰郷した幼なじみの看護学生田中スミ(菊池日菜子)、大野アツ子(小野花梨)、岩永ミサヲ(川床明日香)が体験した、原爆投下後の1カ月が描かれている。10代で凄惨な被爆現場に立ち向かい命に向き合い続けた看護学生を、3人はどう演じたのか。(全2回の1回目/2回目を読む)
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撮影期間中もずっと怖かった
──本作のオファーを受けた感想は?
菊池日菜子さん(以下、菊池) 台本を読む前から恐怖でした。自分が戦争映画に携わるという重い責任への恐怖もありましたが、台本を読むと、想像していた以上に事実の残酷さがひしひしと伝わってきて、ますます怖くなりました。
川床明日香さん(以下、川床) 私もひーちゃん(菊池さん)と同じように、自分がこの作品に携わることへの責任の重さと覚悟を感じました。
菊池 私は台本をいただいた時、近くのカフェに入って号泣しながら一気に読んだのですが、この世界の中で生きなければいけないんだな、と思うと、もっと怖くなって、撮影期間中もずっと怖かった記憶があります……。
小野花梨さん(以下、小野) 日菜ちゃんは、役に対する没入感がすごかったから……。傍から見ていて心配になるくらい役にのめり込むというか、撮影中ずっと「田中スミ」そのもので、圧倒されました。被爆者という立場、被爆者の命を救う17歳の看護学生という立場、2つの軸それぞれに覚悟が必要な難しい役ですよね。
川床 私も撮影期間を精神的に乗り切れるかどうかはずっと不安でした。こんな過酷な設定の中で、自分が岩永ミサヲとして生きられるのか、自信がもてませんでした。
小野 私のイメージだと、明日香ちゃんは日菜ちゃんとは正反対で、どこかクールな部分がある人だと思っていました。深くしっかりとどまる日菜ちゃんに対し、風のようにさらっと流れていくような、それでいてどっしりとした安定感がある明日香ちゃん。対極のおふたりを特等席で見学させてもらえたのは役得でした。


