なかなか役から戻って来られなかった

──撮影が終わった時の気持ちは?

菊池 私は切り替えがとびきり苦手なので、なかなか役から戻って来られず、1カ月かけてようやく、スミと私は別なんだということが納得できた気がします。

 私はどの作品でも役に飲み込まれてしまうのですが、本作品は不安すぎて気を休ませることがさらに不安要素になったので、とにかくずっと自分を追い詰めていました。そのせいか、撮影後1カ月くらいは、安堵感はあっても解放感はなく、スミを引きずっていました。

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川床 それくらいひーちゃんは、まっすぐにスミを演じてくれていたのを思い出しました。

 私は撮影期間中に、時間ができたら教会に行っていたので、撮影が終わった今も、「何かを信じる」ことの強さが、自分の中に残っている気がします。

小野 私は、撮影がすべて終了した時は、まるで鳥の雛が親から旅立つような寂しさを感じました。今回技術スタッフの方々が超絶ベテラン勢揃いで、私たちをすごくあたたかく、そして時に厳しく、見守っていただきました。テーマが重く非常に大変でしたが、それは私たちだけでなく、スタッフさんたちも同じだったと思います。

菊池 今を生きるすべての人に観ていただきたい作品です。ぜひ映画館でご覧ください。

(左から)川床明日香さん、菊池日菜子さん、小野花梨さん

写真=深野未季
菊池日菜子:スタイリング=石川淳、ヘアメイク=猪股真衣子 (TRON)
小野花梨:スタイリング=伊藤彩香、ヘアメイク=森下奈央子
川床明日香:スタイリング=中井彩乃、ヘアメイク=吉田美幸

『長崎―閃光の影で―』

7月25日(金)長崎先行公開

8月1日(金)全国公開
 

STORY

1945(昭和20)年、長崎。看護学生の田中スミ、大野アツ子、岩永ミサヲの3人は、空襲による休校を機に帰郷し、家族や友人との平穏な時間を過ごしていた。しかし、8月9日午前11時2分、長崎市上空で原子爆弾がさく裂し、その日常は一瞬にして崩れ去る。街は廃墟と化し、彼女たちは未熟ながらも看護学生として負傷者の救護に奔走する。救える命よりも多くの命を葬らなければならないという非情な現実の中で、彼女たちは命の尊さ、そして生きる意味を問い続ける──。
 

STAFF&CAST

監督:松本准平/脚本:松本准平 保木本佳子/原案:「閃光の影で―原爆被爆者救護 赤十字看護婦の手記―」(日本赤十字社長崎県支部)/出演:菊池日菜子、小野花梨、川床明日香、水崎綾女、渡辺大、田中偉登、呉城久美、坂ノ上茜、田畑志真、松尾百華、KAKAZU、加藤雅也、有森也実、萩原聖人、利重剛/池田秀一、山下フジヱ、南果歩、美輪明宏(語り)/日本/2025/109分/配給:アークエンタテインメント/©2025「長崎―閃光の影で―」製作委員会

菊池日菜子(きくち・ひなこ) 2002年生まれ、福岡県出身。20年より女優活動を開始。映画『私はいったい、何と闘っているのか』(21年)、舞台「醉いどれ天使」などに出演。映画『月の満ち欠け』(22年)では第46回日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞。近年の出演作は、演劇「ライチ☆光クラブ」(25年)、 映画 『か「」く「」し「」ご「」と「』(25年)など。
 

小野花梨(おの・かりん) 1998年生まれ、東京都出身。ドラマ「嫌われ松子の一生」(06年)でデビュー。『プリテンダーズ』(21年)で長編映画初主演を果たす。映画『ハケンアニメ!』(22年)で第46回日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞。近年の出演作に映画『片思い世界』(25年)、NHK大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」(25年)など。
 

川床明日香(かわとこ・あすか) 2002年生まれ、福岡県出身。14年「第18回ニコラモデルオーディション」グランプリ受賞。雑誌「nicola(ニコラ)」の専属モデルを務め、CM「積水ハウス」で注目を集める。主な出演作に映画『ピア~まちをつなぐもの~』(19年)、『室町無頼』(25年)、NHK「虎に翼」(24年)など。

次の記事に続く 《戦後80年》完成した映画を観ている間ずっと、つらくて苦しくて呼吸が浅い状態が続いていた――原爆投下直後、救命にあたった看護学生を演じた女優たちが感じた戦争への思い【『長崎―閃光の影で―』菊池日菜子・小野花梨・川床明日香インタビュー】

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