それをブタや猫が食べているような、地獄のような状況が…
横田 前線ではロシア兵の死体が転がっていて、それをブタや猫が食べているような、地獄のような状況です。しかも絶えず(ロシア軍の)ドローンの脅威にさらされている。そんな状況にいたら頭がおかしくなる。休みもなしで。兵が少なすぎて休みが取れないんです。
小泉 初期に動員された人たちは休むことなく3年近く、地獄のような戦いを続けているわけで、“ふつう”の状態ではいられないだろうと思いますよね。
横田 いま(開戦から)これだけ時間が経って、歩兵になりたいという人はまずいないんです。そりゃそうですよね。そこがウクライナ軍の一つ大きな問題です。彼らも(自分たちでも)言っていますけれど、領土を取るには、歩兵が絶対必要なんですよ。ドローンだけで一生懸命やったところで、ただ壊していくだけで、領土は取り返せていない。
小泉 一般に軍隊には陸軍種、空軍種、海軍種があり、ドローンは空軍種に含まれます。このなかで唯一、陸軍種だけが持っている機能は、土地を占領することなんですよね。人間は陸生生物だから、土地を占領することによって相手にダメージを与えたり、何かを強制したりすることができる。ドローンは損害を抑えながら戦えるとはいえ、やはり陸軍種の本丸である歩兵や砲兵、機甲科(戦車・偵察)がいないと、戦争の決定力が持てない。そこで、ロシアは強制的に人間を歩兵に仕立て上げ......。
横田 そうなんです。
小泉 囚人だったり、お金に釣られた志願兵だったり、騙(だま)されて連れてこられた外国人だったりとかをどんどん前線に出して死なせていくから、結果的に戦場で優位に立っているのがロシア軍であるということですよね。特に横田さんが見てこられた場所は、どれもこれもロシア軍の前進が伝えられて、非常に苦しい地域です。かなり危機感が強かったんじゃないですか。
横田 前回の取材まではスラヴャンスクやクラマトルスクは安全でしたが、今回は、前線から戻ってスラヴャンスクに泊まっていると、夜、砲弾が落ちてくるんです。FPVまで飛んでくるぐらい。スラヴャンスクにFPVが飛んでくるということは、(ロシア軍は)相当前進しているんですよね。だから、どこが安全かわからなくて。歩兵がどんどん供給されてくるというか、殲滅しても、また出てくる。きりがない。

