戦争と地続きの暮らしを送るウクライナの人々。ドローン飛び交う戦場の兵士たち。涙と怒りだけでは語れない日常の姿。現地を7回訪れ、激戦地で従軍した横田徹カメラマンとロシアの軍事・安全保障政策を専門とする小泉悠・東京大学准教授の対談の一部を『戦場で笑う』(朝日新聞出版)より紹介する。

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ドローンは砲兵でありスナイパー

小泉 ドローン部隊の目標発見はドローンだけでやっているんですか。衛星画像の支援はないですか。

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横田 いや、衛星は使ってないです。(ドローンは)固定翼機型で、搭載されているカメラでものすごく鮮明な映像が見られるので。

小泉悠氏 ©︎佐藤創紀(朝日新聞出版写真映像部)

 DELTA(デルタ)という地図アプリ、いまだにあれを使っているんですけど、それを使ってターゲットまで誘導できるんですね。(基地のパソコンの)モニターを見ていると、ドローンが飛んでいくルートが見えて、ターゲットの上に着いた瞬間にカメラを立ち上げるんですけど、いきなり眼下にくっきりとターゲットが映し出され、ちょっと微調整しながらクリックすると、すとーんと(爆弾が)落ちて、どーん。

小泉 最後の落ちていくところは、よくSNSにも上がっていますね。ロシア兵が攻撃される映像を見ると、寝ているところや外に出て用を足しているところにもくるんですよね。本当に容赦ないなと思うんですけど。

 あともう一つ。前線で塹壕にこもっている部隊から、ドローン部隊に攻撃の要請がきたりするんですか。

横田 ものすごく危機に陥ったときは、たぶんくると思います。

小泉 一種の砲兵みたいな使い方もされているんでしょうね。

横田 砲兵であり、スナイパーですね。砲撃より精度が高く、砲弾一発がいくらするかわからないですが、それに比べればコストが安いということがあるんでしょうね。

小泉 ものの値段だけでなく、砲弾を運用するには榴弾砲なり迫撃砲なりが必要になりますから、運用コストも安いんじゃないかという気がしますね。

ウォッカを飲んで「今日は仲間が死んだからお前も付き合え」

横田徹氏 ©︎佐藤創紀(朝日新聞出版写真映像部)

横田 (砲兵部隊は)兵士の数も必要になりますし。僕が寝泊まりしたのが、本来はダメなんですが、軍の宿舎だったんですね。スラヴャンスクのあたり一帯に展開する部隊で。大勢で寝起きすると狙われるので、5、6人に分かれて住んでいて、その家の一つに。そこで一緒にいたのが歩兵だったんですよ。歩兵はいま、ものすごくすさんでいて。毎日人が死んでいるんです。夜、みんなで大騒ぎするんですよ。今日は仲間が死んだからお前も付き合えと、ウォッカを飲んで。戦場では御法度なんですけど。

小泉 そうしないと正気を保っていられないんでしょうね。弔いもあるでしょうし。