実際、本作には大量のギャグが詰め込まれていて、観客の爆笑を誘った。それでいて最後にしんみりさせるあたりは、さすが“アジアのA24”と呼ばれるヒットメーカー、GDH製作のエンタテインメント作品だ。本作のエンドクレジットには、ジャッキー・チェン映画のように、ボーナスとしてNGシーンが流されているのも楽しい。

『紅い封筒』

「エンドクレジットのボーナス動画を観ると、役者がアドリブをしていることがよく分かりますね。特にビルキンが一番アドリブが多かったです。

 彼はアドリブで監督をからかうのが好きなんです。例えば監督が『こうしてみて』と指示すると、全然別のことをやってみたり。時には映画では到底使えないような演技をすることもありましたが(笑)、それも監督をからかうためでした。そのおかげで、撮影現場は笑い声が絶えませんでした」

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ビルキンのアドリブが生んだ魔法のような瞬間

 ピサンタナクーン氏はビルキンを絶賛。

「ビルキンは演技に対して恐れることが一切なく、彼の演技の幅はとても広いです。何でもやってくれました。その結果、いくつもの魔法のような瞬間が生まれました」

 その一つが、警察署で音声のない動画を観るシーン。犯人たちが集団である人物に暴行を加える瞬間を隠し撮りしたメンだったが、スマホが壊れていて録音が出来なかった。その動画を証拠として警察で流す際に、殴ったり水責めしたりする擬音を、メンがアテレコするシーンはまさに爆笑もの。

「あのシーンの撮影でビルキンが水を噴いたり、サンダルで自分の頭を叩き続けたりしたのはアドリブで、誰も彼がそこまでやるとは思っていませんでした(笑)。あれは本当に魔法のようなシーンができたな、と思っています」

『紅い封筒』

 日本での公開はまだ決まっていないが、ピサンタナクーン氏は、

「ビルキンとPPのファン以外の方にも見ていただきたいと思っています。この映画が持つユーモアのセンス、そして主演2人の魅力、演技力の素晴らしさは、どんな人の心にも届くと信じています」

 各国で爆笑を巻き起こしてきた本作が日本の劇場でも観られることを期待したい。

 

『紅い封筒』
 

STAFF&CAST
監督:チャヤノップ・ブンプラゴーブ/出演:プッティポン・アッサラッタナクン(ビルキン)、クリット・アンムアイデーチャコーン(PP)、アラチャポン・ポーキンパーコン、ピヤマート・モンヤクン、ティーラワット・アヌワットウドム/2025年/タイ/128分

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