大阪・関西万博に合わせ、3月に続き今年2回目の開催となった大阪アジアン映画祭。8月30日には日台合作映画『ドラゴン・スーパーマン(2Kレストア版)』が上映された。1957年に発表された桑田次郎原作の漫画『まぼろし探偵』はラジオ・テレビ・映画になって人気を博したが、実は1968年に台湾でリメイク3部作が製作されていた。今回上映されたのはその1作目のレストア版。演出には日本の映画版も担当した故・小林悟監督が共同で当たっており、上映後には夫人の初枝氏が登壇、本作にまつわる秘話を語った。
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「俺、映画監督以外は何もできない」といつも言っていた
小林悟監督は、日本映画史において「ピンク映画第1号」の監督として、また生涯を通じ約500本もの作品を手がけたことで知られている。惜しくも2001年に亡くなられたが、今回のレストアはその足跡に改めて光を当てることになった。初枝夫人に加え、台湾の国家電影及視聴文化中心のチェアマンであるアーサー・チュウ氏も登壇、聞き手は映画評論家の宇田川幸洋氏が務めた。
宇田川幸洋(以下、宇田川) 小林監督とは、女優をされていた時に知り合われたのですか。
小林初枝(以下、夫人) ええ。1本だけ、小林監督の時代劇に出させていただいたことがありまして。
宇田川 日本映画史では、小林監督は「ピンク映画」というジャンルの第1号を撮った人として有名です。また、生涯で約500本もの作品を残したことでも知られています。
夫人 「俺、映画監督以外は何もできない」といつも言っていました。
宇田川 監督が「ピンク映画第1号を撮った」と言われるきっかけになったのが、1962年の『肉体の市場』ですね。
夫人 そうです。あの映画がそういうふうに言われてしまったので、そこからピンク映画の監督ということで、(その立場に)居座るしかなかった、ということだったようです。
宇田川 『肉体の市場』は、国立映画アーカイブにも収蔵されていますが、もともとは社会派的な題材として作られたそうですね。
夫人 いわゆる「六本木族」の男性からレイプされてしまった姉妹の話です。妹がお姉さんの仇を討ちたい、本当のことを知りたいということで、自らそのグループに入っていく。そして、レイプした相手と関係を持ってしまうのですが、そこで初めて本当のことを知るんです。


