小川直也にとっての「橋本真也」

「デビュー戦や1・4ドーム、『負けたら即引退』など、橋本さんとは何度も闘ったし、OH砲として地方を一緒に回ったり、ハッスルを立ち上げたりとリングの思い出はたくさんある。だけど、そういうものを超えて、俺は夜の会での橋本さんが印象に残ってる。どんな地方に行っても、どんな激しい試合であっても、大会が終わると飲みに行って、ニコニコしながらカラオケを歌ったりしてるんだよ。そっちのほうが橋本真也らしいなって(笑)。もちろんプロレスラーとしても素晴らしいんだけど、結局は素の橋本真也がいちばん面白かったなって、近くにいると感じたから。

 ZERO-ONEの巡業で試合後に打ち上げがあると、橋本さんは寿司が大好きだから必ず寿司屋を探すんだよ。小さな街でも繁華街には必ず寿司屋はあるからさ、『よく探してくるな。こんなところまで』と思っていたけど(笑)。そして橋本さんは寿司ネタをいつも4貫ずつ注文して、2貫食いするんだよ。一度に1貫じゃ物足りなくて、一気に2貫ずつ食うのがうまいって言っててさ。『小川も2貫ずつ食ってみろよ、うまいぞ』って言われたけど、『俺は1貫でいいですよ』って断ったけどね(笑)。

 橋本さんは、歳は俺より2つ上で、プロレス業界では先輩でもあったからさ、リング上ではパートナーやライバルだったけど、リングを降りたらお兄さんみたいな感覚ではあったよ。

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 プロレスのことをいろいろ教えてくれたし、巡業のイロハも教えてくれたし。ホントに俺にとっては、すごく楽しくて、面白くて、兄貴みたいな存在だった。

 それで一緒にメシを食った時は、二人で猪木さんの悪口を言って笑ったりもしていたよ(笑)。悪口といっても嫌ってるわけじゃなくて、猪木さんが詐欺みたいな話で騙されたこととかを笑い話にして、『そうそう!』『猪木さんも好きだよな~』って言い合ったりしてね。

 どうやったって猪木さんにプロレスでは太刀打ちできないっていうのは、二人ともよくわかってたからさ。猪木さんの愛すべき弱点を指摘し合って、『ここだけは俺たちが勝ってるよな』っていうことを探すっていうね(笑)。

 そういう意味では、猪木さんは俺たちのプロレス界の親父だし、俺と橋本さんは悪ガキ兄弟だったのかもしれないな」

2005年に40歳の若さで亡くなった橋本真也氏(写真:時事通信)
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