いつもの珍発言が始まった
中垣内 本当に……なんというか……またいつもの珍発言が始まったのかと思いました。なんとかしたい気持ちはわかるけど、現場を知らないにもほどがある。1枚の田に水を張るのに、いったいどれだけの量を必要とするのかを知っているのかと。給水車で何とかなる話じゃないよ。「米農家は2000万円のコンバインを1年のうち1カ月しか使わない。買うのではなく、レンタルやリースがサービスとして当たり前の農業界に変えていく」という発言にしてもそう。リースなんて簡単にできるわけがない。なぜなら、農家が農業機械を使いたい時期は一緒だから。仮にリースの日程を組めたとしても、雨が降れば日程がずれていく。それでは適期に農作業ができなくなる。
小泉農相は思ったことを何でもかんでもすぐ口にするけど、それは浅はかだし、農家から笑われるだけですよ。
――小泉農相が備蓄米を大量に放出したことについても、農家の反発は強かったように感じます。中垣内さんはどう思われましたか。
中垣内 まったく小泉は……。あっ、呼び捨てにしちゃった(笑)。小泉農相は「(価格を下げるために米の供給量を)じゃぶじゃぶにする」と発言したじゃないですか。あれは、世間では米価が高いことがまるで悪のように思われているから、それを打ち消すためだったわけでしょ。
たしかに米価を下げれば、国民を納得させられ、選挙の票につながるかもしれない。ただ、それでは農家が困るわけです。諸経費が上がっているのに米価がずっと低迷してきたなかで、農業経営は非常に厳しい状況でした。
日本の米作りは本当に瀬戸際まで来ているんですよ。そのことは、政治家や農林水産省だけでなく、消費者にもわかってもらいたい。このままでは国産の米が食べられなくなりますよ。
※本記事の全文(約8800字)は、「文藝春秋」2025年10月号と月刊文藝春秋のウェブメディア「文藝春秋PLUS」に掲載されています(中垣内祐一「小泉農相は現場を知らないにもほどがある」)。全文では、以下の内容をお読みいただけます。
・農業のほうがきつい
・買い直せば2億数千万円
・売上げはどれくらい?
・JAに米が集まらない理由
・日本の米作りは崩壊寸前

