小学4年生で初めて放送委員会に入ったなるみ。6年生のゲンシくんが、なんだか変なことを言ったり、女子のスカートをめくったりしている。先生にも親にも、友達にもこんなこと、相談できない。ゲンシくんの行為はどんどんエスカレートし、とうとうある日2人きりの放送室で事件が起きる……。
漫画家・ちくまサラさんのコミックエッセイ『10歳で性被害にあいました 誰にも相談できない』(KADOKAWA)は、子どもが直面する性被害の現実と、誰にも打ち明けられない深い葛藤を描き出した作品だ。
本作はどんな問題意識から生まれたのか。担当編集者の間有希さんに話を聞いた。(全6回の1回目/マンガを読む)
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自分がした嫌な思いを、子供には経験してほしくない
本作の原案となったのは、ちくまさんがブログで発表していた実録漫画だ。間さんは次のように語る。
「ブログで発信されていた作品を見つけて、周りに言いづらいセンシティブな内容ながら、当事者意識や問題提起が明確で共感性が高いと感じました。
昔は“スカートめくり”なども普通でしたが、振り返ると女性なら誰しもが性的な目で見られたり、からかいをうけたり、ちかんにあったりなど、似たような嫌な経験を一度はしているのではないかと思います」
2児の母であるちくまさんは、育児に関するコミックエッセイも精力的に発表している。本作が誕生した背景には、母親としての視点を持つようになったことも大きく影響しているという。
「自分がした嫌な思いを子供には経験してほしくない、という気持ちは誰しも持っていますよね。そこを一つの問題提起として世に出すという行動は、母親だからこそだと思います。
根本的な部分として『あの時どうすればよかったんだろう』『母親としてどうしてあげたらよかったんだろう』と、何らかの解決策を提示したいという思いを打ち合わせの最中に何度も話されていました」
書籍の出版時には「誰にも相談できない」というサブタイトルが付けられた。性被害を受けた子供に対して親がどう寄り添うべきか、という裏テーマが込められている。
「本作は単に加害者に対して復讐するようなスカッとした物語ではなく、被害者に対して『こういう助けてくれる場所があるんだよ』という公共機関の話や、当時母親からどう声を掛けてほしかったのかといった感情の吐露も描いています。
問題を解決するだけではなく、当事者に寄り添い会話する部分を、丁寧に考えてくださったと思います」


