参院選で自民党は惨敗したが、ここ最近の首相の支持率は上がっていた。責任は石破氏だけでなく裏金問題や旧統一教会問題を抱えた自民党の体質そのものであり、そうした人たちが画策する石破おろしなんて……と世間は見破っていたのだ。

石破茂首相 ©時事通信社

石破らしさを発揮できた最大のチャンスは…

 それなら世論に訴えるべく自分から戦うべきではなかったか。石破らしさを遅まきながら発揮し、かねてからの持論を何か問えばよかった。党内基盤が弱いから融和を優先したというが、そうすることで旧安倍派などに認められたことはあっただろうか? 西田昌司参院議員などは昨秋の衆院選後からずーっと石破退陣を言い続けていたではないか。西田氏自身も裏金議員だったが。

 参院選後の首相は「石破おろしを仕掛ける旧安倍派とか、退陣報道をした読売への対抗心は凄かった」と取材した記者らは皆が口を揃える。しかしそれって自分を守るためのエネルギーであり、旧安倍派に対抗するなら政治とカネの徹底解明を掲げて世間に問えばいいのにそういうことはしない。持論はあるのに実行しようとしない胆力の無さと共通していた。やはり政策だけでなく「人」も見ておかなくてはいけないという教訓があったのが石破政権だった。いくらでも口では言えるからだ。

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 石破らしさを発揮できた最大のチャンスは3月の商品券10万円配布発覚時にスパッと辞任することだったと今でも思う。歴代の自民総裁も慣例で続けてきたのになぜ石破さんだけ?とレガシーになるチャンスだった。政治とカネの議論も再沸騰したことだろう。しかしその後も居残り、石破らしさは影を潜め、権力闘争で引きずり降ろされた。

 退陣表明会見は「幹事社以外の質疑は5社だけでフリー記者は当てられず、消化不良の印象ばかりが残った」(東京新聞9月9日)。

 ふと思う。石破らしさなんて最初から無かったのかもしれない。

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