――そうした分岐点でユミさんはホストを選んだ、と。
ユミ コロナ禍の緊急事態宣言でメン地下が自粛になっちゃった時に、ホストクラブだけは営業してたんです。夜職専門の不動産屋が持ってる歌舞伎町近くのマンションに住んでいたんだけど、遊びに行ける場所がホストクラブくらいしかなかったし、「初回安くいけますよ」って言われて。
ホストクラブでは、接客するホストを客が指名することになる。その客に専属で接客を担当するホストのことを「担当」といい、基本的には同一店舗では「担当」を変えることはできない。
――ホストクラブでユミさんはどんな人を指名したんですか。
ユミ めっちゃイケメンで、顔が超タイプでした。「出会っちゃった!」みたいな感じ。なんか周りが輝くんですよ、「この人だ!」って。ビビッと来るんです。
――そこから一気にハマった?
ユミ いや、私はハマってはいなかったと思いますよ。
――どういうことでしょう?
ユミ 最初の担当ホストが現実的な人で、ホスト業界のルールについて何も知らない私に全部教えてくれたんです。「ホストクラブは担当を立てる場所だ」って言われて、「ヘルプ(※注:接客時に補佐につくホスト)に嫌な態度を取るな」とか「俺の客として上品に振る舞え」とか。それまでホストに通ったことがない私は「そうなんだ」って信じちゃいました。
「すべてお金で決められるホストは最高だなって思いました」
――楽しませてくれるというより、教育されているようにも聞こえます。
ユミ それに、普通のホストは女の子に「お前だけだよ」って思わせようとするけど、その担当は「お前さあ、俺がどれだけ努力して隠しているかわかる?」とか「俺って忙しいんだよ」って、私や他の女の子たちにどういう営業をしているのかを隠さずに教えてくれたんですよ。「ホストはこういう生き物だ」ってことを。
――最初の段階で裏側も含めて“しくみ”を知ってしまった。
ユミ それでわかったんです。「お金を使ったら(私に使ってくれる)時間が増えるんだ」って。だからホストに対して夢は抱かなかったし、色恋営業にハマることもなかったです。「そうか、お金を払う側が何でも決めていいんだ」って。お金がなくなったら疎遠になれるし、すべてお金で決められるのは最高だなって思いました。
――お金で決められることが最高?
ユミ そう。お金があるときには楽しませてくれるし、自分に手ごろな彼氏ができたら別にホストはブロックすればいい。それでもたまにお金持って店に行けばまた相手してもらえる。「彼氏いて連絡取れなかった、また飲み行っていい?」って言えば、こっちはお客さんだから「また飲みに来てね」で終わる。もともとがオタク的体質だから、連絡取ったら「行かなきゃ」って使命感を持っちゃうし、行けないときに連絡取るのは私も面倒くさい。だからホストは基本的にブロック。で、店に行くときだけ電話かけるとか、LINEとかすればいい。お金があればなんとかなるから、いちばん都合よく相手を使える。
