――5万円の服は買えないけどホストには100万円を払える、みたいな?

ユミ そう。ホストに100万円は払えます。自分は本当に、他人にしか大金を使えない。自分にお金を使いたいと思えないから、ホストクラブに行ってるときだけ、ちょっと贅沢してる気持ちになれる。メン地下なんてタチの悪いところはポイントカード制にしてて、しかもカードの有効期限が1カ月で、その間に100万円使ったらデート、300万円使ったらユニバ(USJでのデート)とかでしょ。でもホストは100万円使えばユニバに行けるし、全部払ってくれる。メン地下はコスパ悪いけど、それに比べればホストはコスパいいですよ。

 

――支払った金額に対して、対価が見合っている?

ADVERTISEMENT

ユミ 見合ってますね。合計で2000万円くらいは使っているけど、ホストクラブでは見合ってないって思ったことはない。

――後悔はない?

ユミ 後悔はないです。

「自己肯定感は低いけど、この見た目でこれぐらい稼げるんだったらいいかとか思っちゃう」

――「この人にお金を使いたい」という感覚を、もう少し説明してもらえますか?

ユミ 友達とかに多いのは、やっぱり自分のことがめっちゃ嫌いで、努力して何かの一番になったことがなくて、自己肯定感が低い子が、自分が頑張って稼いだお金を他人に使うことで、他人が何かの形で一番になるっていうことに優越感……じゃないけど、自己顕示欲なのかな? そういうのが満たされるっていうタイプはいます。

――貢献してる、という感じですか?

ユミ ホストとかメン地下とかは自分のおかげで生きていけてるわけだから、めっちゃ感謝されるじゃん。人のためになっているって思えると、満たされる。

――ユミさんご自身は?

ユミ 私は……、本当に小さい頃から他人に貢ぐ行為を否定されたことがない環境で育ったから、……わからないですね。

――自己肯定感は低いと感じますか?

ユミ 低いは低いけど、整形とかめっちゃして努力してる子よりは低くないかも。「この見た目でこれぐらい稼げるんだったらいいか」とか思っちゃうし。

ユミさんはその後、別のホストクラブで別の担当を見つけたり、並行してメン地下やボーイズバーなどにも通っていたが、現在は昼職に就き、ホスト通いをやめた。いまは2.5次元の舞台俳優を推しているという。

――ホスト通いをやめたきっかけは?

ユミ 同棲していた男と終わったとき、ですね。彼氏はメン地下のアイドルだったんですけど。私は共依存タイプで、それまでもヒモみたいな彼氏とか、常に一緒にいてくれる人がとにかく好きだったんです。歌舞伎町に住んでいる5年間に10人くらいは彼氏がいました。

 

――多いですね。

ユミ でも最後の元カレは付き合っている時期が長かったから、別れた時にすごい疲れちゃって。「私って何回これ繰り返すんだろう」「またこんなに虚無感を味わいたくないな」とか「次の人をこんなに好きになるのかな」とか「でもまたこんなに悲しいことが起こるのか」とか、いろいろ考えちゃったんです。ちょうど自分も30歳になったぐらいだったんで、人生について考え始めたんですよ。この人生つまんな、みたいな。

――どういうふうに考えたんですか。

ユミ 自分の推し活がそのまま相手の生活の中心になるのが嫌になったんですよ。「自分がいなくなったら困る」みたいな立場のことをもうやりたくなくて。ホストとかメン地下みたいに、こちらのお金で生活が左右されるような人に責任が持てないし、持ちたくない。だって、いま34歳なんですけど、稼げるのだっていずれ終りが来るじゃないですか。このままおばさんになったら稼ぎはどんどん減っていくし……。っていう漠然とした将来への不安があって、稼げなくなったときにまだホストとかメン地下が好きだったら辛いじゃないですか。で、天涯孤独になって親にも迷惑かけることになったら嫌だなぁ、って。もうやりきったかな、って思いますし。