私はその方が好きですね。全体像として、私と美久子に通ずるものはあまりないかもしれませんが……。日本の社会における中高年女性の立ち位置や役割というものを、日頃から関心を持って見ていました。なので、美久子に対しても同世代の女性としての共感はもちろん大いにありました。

 そもそもこの年代の女性が主人公の作品って少ないんですよ。中年以降の女性がその後どうやって生きていくのか。そういう作品はずっとやりたかったんです。

 

「母の顔を一面的にしか描かない」

――10代、20代の女性を描く作品、その世代の俳優が主演する作品は多いのに、30代以降の女性の俳優は、決まった役柄に収まることが多くなりますよね。

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 そう、ほとんどお母さん役なんです! この問題は日本に限らず、どの国の女優さんも言っていますね。『プラダを着た悪魔』のような作品もある、かのメリル・ストリープでさえ言っていましたから。

 もちろん母親役が悪いというわけではないんですよ。ただ、母親の描き方にステレオタイプなものが多すぎますよね。母である前に女性だし、職場での顔、家族以外に見せる顔、いろいろあるんです。人間は多面体なのに、一個人としてではなく、母の顔を一面的にしか描かないことが多いように感じます。

――南さんは主演に限らず、昨今は特に助演が多い印象ですが、やはりその思いは長くお持ちでしたか。

 私も20代の頃は主役が多かったので、その事情もわかるんですが、年齢やキャリアを重ねてきた自分が見たいものが、20代の女性が主軸となる作品かというと、そうではない。やっぱり自分の見たい作品、演じたい役を常に探しています。

出会いと交流から「自分自身を見つめなおしていく」

――では、今回のテーマはぴったりだったわけですね。

 美久子の人生においては、当然彼女自身が主人公で、心の奥底では何か新しいことや人と出会うことを望んでいるし、この先の人生を切り開くきっかけを欲している。けれど、それらを探しにいく術もなければ出会いもない。

『ルール・オブ・リビング~“わたし”の生き方・再起動 ~』より ©︎Mirus Pictures

 そんなところへ、冒険心や好奇心を持って旅行し、慣れない環境でも自分のものにしようとする生命力に溢れたヴィンセントと出会った。彼との交流から異文化を吸収して、少しずつ自分自身を見つめなおしていくという女性の話ですから、いろいろな演じ方ができるなと。だから、この映画のオファーはすごく嬉しかったです。