「この問題は日本に限らず、どの国の女優さんも言っています」
61歳となったいま、さらに勢いを増して活躍する、俳優・南果歩さん。全国各地で公演される舞台『ハハキのアミュレット』も控えるなか、主演映画『ルール・オブ・リビング~“わたし”の生き方・再起動~』が公開中だ。
南さんが直面した“問題”、仕事を決めるうえで大切にしていることとは?(全3回の1回目/続きを読む)
◆◆◆
――『ルール・オブ・リビング』はアメリカ出身の俳優グレッグ・デールさんが脚本・監督を手掛けた映画ですが、どのような経緯で出演されたんですか?
南果歩さん(以下、南) グレッグとは、1999年に彼が演出した舞台『短編集』に出演してからの付き合いで、今回は映画を初監督するというので直接オファーを受けました。
『ルール・オブ・リビング ~“わたし”の生き方・再起動~』で南さんが演じるのは、49歳の独身女性・美久子。一人娘は会社を辞めて海外へ、姉からは結婚しろとしつこく言われ、仕事の合間に入院中の母を介護する日々の生活に疲弊し、孤独な生活を送っている。ある日、娘の紹介で日本に来たアメリカ人の中年バックパッカー・ヴィンセントが現れ、3ヶ月間のルームシェアが始まる――。
――南さんのことをよく知った上でのキャスティングだったわけですね。
南 私の仕事への取り組み方、役へのアプローチの仕方をよく知ってくださったうえでのオファーだったのかなと思いますね。
ボサボサの髪、ノーメイクで現場入り
――デール監督に少しお話を伺ったところ、美久子が家にいるシーンの撮影で、特に指示をしたわけではないのに、南さんがボサボサの髪にノーメイクで現場に現れたと。「完璧に美久子だった、さすがだ!」とおっしゃっていました。
南 美久子は、家族で住んでいた家に一人ぽつんと取り残されちゃったし、会社でも若い人にちょっとずつ追いやられていて居心地が悪い。仕事に追われ、介護もして、孤独と焦燥感を抱えながら粛々と暮らしていますからね。
人との交流、ときめき、喜びを感じる瞬間が極端に少なく、生活の中の潤いが完全に欠けているといった女性像を考えたら、家ではそんな感じかなと思ったんです。
――臆病で心を閉ざしがちの美久子は、世間がイメージする南さんとは異なるタイプの女性です。俳優さんに役とご自身の一致や相違を聞くのは野暮ですが、自分とかけ離れた役柄の方がやりがいを感じられますか。

