主演映画『ルール・オブ・リビング~“わたし”の生き方・再起動~』が公開中の俳優・南果歩さん(61)。乳がん罹患、うつ病、二度目の離婚を経験した50代は「奈落のようだった」と明かしながらも、常に前向きな挑戦を続ける理由、その秘訣について伺った。(全3回の3回目/初めから読む)
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「基本的にはやっぱり人間は一人だと思っているんです」
――家族との距離感・関係性に悩まれる方は少なくないと思いますが、南さんが意識されていることはありますか?
南果歩さん(以下、南) 家族の存在というのは大きいものだし、彼らとのいろいろなやり取りで生まれたものが私の一部分になっているんですけど、それがすべてじゃない。そういうことは考えていますね。
これは家族に限らず、人間関係のすべてにおいてですけど、私は、基本的にはやっぱり人間は一人だと思っているんです。
スタートはまず自分自身。自分という木の幹が、すくすく育っていかないと枝葉も伸びないし、花を咲かせたり実をつけたりして誰かを楽しませることもできない。木陰を作って休ませることもできない。だからその幹、自分を太くしていけば、周りも幸せになっていくんじゃないでしょうか。
――自分を大切にしてはじめて、周りを幸せにできる、と。
南 でも若い頃は、人のために何かすることが自分の喜びになると思っていましたね。思えば自分のことをちょっと置いてけぼりにしすぎていたかなと。
もちろん、誰かが喜んでくれる、幸せにするのって、とても尊いことなんですけれど、自分をすり減らしてまでやっちゃいけない。人生後半に差し掛かってきて……奈落のような50代を経て、考えが変わってきたんです。
乳がん、うつ病、二度目の離婚を経験
――それは大病をなさったから、もしくは一人になられたからですか。
南 病気をした後、それと離婚後ですね。50代になって、もうなんと言っていいかわからないほど悲惨というか、散々な目に遭いました。一気にあちこちから波が押し寄せてきて、それにぶつかっていかなきゃ! と思ったけど、その時は自分を守る術がなかったんです。
――3年の間に、乳がん、うつ病、二度目の離婚を経験されて……。
南 フィジカルもメンタルも同時に一気に全部やられちゃいましたから。自分の中に新たな方向性を見つけたくて、ずいぶん悶えました。

