逃げの姿勢が信頼を無くす
今すぐ試してください。目の前にいる人(もしいなければ、いると想像して)の眉間をじっと見つめながら、「こんにちは」と挨拶してみてください。
どうですか? あなたの視界に映っているのは、豊かな表情を持つ「人間」ですか? 違いますよね。感情も魂も感じられない、顔なし『のっぺらぼう』が見えませんか?
私たちは、のっぺらぼう相手に、心からの言葉を届けられるほど強くはありません。得体の知れない存在を前に、不安になるなという方が無理な話です。
「相手から見たら目が合っているように見える」というのは、所詮、あなたの“逃げ”でしかありません。その逃げの姿勢、不安は、空気のように相手に伝播します。あなたの信頼を静かに蝕んでいくのです。
「左目の黒目の光」を見ればいい
では、一体どこを見ればいいのか。
相手の「左目」。その黒目の中に映る「光」を見てください。
試していただいた方からは、「先生、生まれて初めて、人の目を見て話せました……!」「あれほど過剰だった自意識が消えて、自然に話せるようになりました」「相手との間にあった壁が、一瞬で溶ける感覚でした」と声をいただきます。中には涙ぐみながら報告してくださる方もいらっしゃいます。
なぜ「左目」なのか?
私の仮説ですが、視覚情報は反対側の脳で処理されるため、相手の左目を見ることで、感情や感覚を司る「右脳」に直接アクセスできるからではないかと考えています。いわば、潜在意識のホットラインを開通させ、無言の信頼関係(ラポール)を築くスイッチとなるのです。
「ずっと左目を見続けるのは不自然では?」その通りです。実践してほしいのは「ガン見」ではありません。大切なのは、視線が迷子になった時に「戻る場所」を決めておくこと。私はこれを「視線の故郷(ふるさと)」と呼んでいます。
言葉を選ぶときにふと視線を外しても構いません。しかし、必ず「故郷」である相手の左目の黒目の中の光に帰ってくるのです。たったこれだけで、あなたの中に一本ブレない芯が通り、どっしりとした安心感が生まれます。
