長年結婚生活をともにしたパートナーに、ある日突然「一人に戻って残りの人生を自由に暮らしたい」と離婚を切り出されたら、どうするか?

 厚生労働省の調査によると、2023年に離婚した夫婦のうち、婚姻期間が20年以上の“熟年離婚”は3万9810件、離婚率は23.5%に及び、統計のある1947年以降で過去最高を更新した。

 『ルポ 熟年離婚』(朝日新書)では、40の具体的な熟年離婚の事例と、専門家によるアドバイスをまとめている。その中から、身につまされる事例を抜粋して紹介する。

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写真はイメージ ©beauty_box/イメージマート

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「まさか、うちの夫に限って……」

「マル秘」の印が押された夫の調査報告書を手に入れたことで、東京都内に住む妻(60)は夫(61)から自由になった。

「それまで自分の人生を生きたことがなかった」と、いまは思える。

 探偵事務所に夫の調査を依頼したのは3年前のことだ。

 日ごろからお茶や食事をする10人ほどの友人のうち、6人が夫の浮気を経験していた。

「まさか、うちの夫に限って……」

 人ごとのように聞いていたが、夫が隠し持っていたクレジットカードの明細書を見つけ、胸がざわついた。

 1回10万円以上もする高級クラブでの飲食、20万円もする女性用の高級バッグなどを買った明細が残っていた。

浮気相手は娘より年下の女性

 夫が風呂に入っている隙に、スマートフォンを盗み見ると、これまでなかったロックがかかっていた。暗証番号をどうにか割り出し、LINEを見ると、見知らぬ女性と親密なやり取りをしていた。

 翌日の午後6時、その女性と食事をするために渋谷で待ち合わせていることが分かった。

 かつて夫の浮気調査を依頼した友人から探偵事務所を紹介してもらい、「特急」扱いでその女性の身元調査を即日依頼した。

 調査費は60万円と安くなかったが、証拠を押さえ、浮気相手に慰謝料を請求し、夫と別れてもらいたい一心で支払った。

 手元に届いた報告書には、当日の夫の行動がしっかりと記録されていた。

 午後5時50分、夫のベンツが渋谷の複合施設の地下駐車場へ滑り込んだ。

 午後6時過ぎ、待ち合わせ場所と思われる1階のカフェに現れたのは若い女性。7時前、2人は六本木のイタリアンレストランに移動した。ワインを片手に親密そうに食事をしている2人の写真と動画が添えられていた。

 写真の女性はスラリと背が高く、アイドル歌手のような容姿で目立っていた。

 店を出た後、女性はコンビニに寄って1人でタクシーに乗り、都内のマンションへ帰宅した。