「すぐそこにクマがいるエリアで生活している人にとってみたら、『いやいや、可愛いとかの世界ではないよ』って話になりますからね」

――「OSO18」の怪物化や頻発するヒグマ被害について思われることは?

國村 OSOだけに限らず、そのちょっと前から色々な、やっぱりドキュメンタリーのナレーションで北海道のヒグマ親子の話であったりとかもやらせてもらったりしていたんです。

対策班が実測したOSO18の足跡(南知床・ヒグマ情報センター提供)

 その時から思っていたのは、大型の野生動物、ヒグマだったり北海道以外で言ったらツキノワグマにしてもやっぱり大きな動物で、人間が対峙して闘うには、とてもじゃない相手で、それと近いエリアで暮らして行くということの難しさというのが今、すごくやっぱり顕在化しているというか、表に出て問題化しているんじゃないかなと思います。

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 で、やっぱり自然動物たちのエリアに、人間の方が行っているんですよね、結果的に。人間が自分のエリアをどんどん広げて行って、自然動物たちはどんどん狭いエリアに押し込まれて結果的にそうなっている。

 それの結果として、“共存の難しさ”みたいなものが、すごく顕在化している。

 この間の獣害に遭った人もそうだし、もうやはりこのままでは解決策を出せずにずっとここまで来ていて、かと言って駆除すれば良いのかという話でもないし。

 駆除を、今度は逆の動物愛護の立場から非難する方もいらっしゃるみたいだし。それはそれとして、また別の問題だろうとは思いますけれども。

 やっぱりでも、すぐそこにクマがいるエリアで生活している人にとってみたら、例えば自分がそこに生活している人間であれば、「いやいや、可愛いとかの世界ではないよ」って話になりますからね。こっちが狙われちゃうんだよっていう話になっちゃいますもんね。

――「共存」みたいな、きれい事では済まない世界かもしれませんね。

國村 そう。それでは済まないなと思う。増してや、クマたちの方が、自分たちから何かの方策を練るなんてことはあり得ないわけですからね。やっぱりそれは人間が考えなければ仕様がないと思いますけどね。

――NHKスペシャル「OSO18」でもナレーションを担当されて、本書や番組にまつわるエピソードなどありましたらご紹介ください。

國村 藤本さんとは結果、まだ一度もお会い出来ていないんです。電話ではやり取りさせて貰ったりしているのですが……。

 エピソードと言って良いのかどうか分からないんですけれども、藤本さんというのは、元々ハンターではないんですよ。

 ご自分は鉄砲打ちではなくて、むしろ釣りの専門家なんですね。

 で、実は私、趣味がフライフィッシングという釣りなんです。

 そのことで、藤本さんには「是非、北海道に一度、来てくれ」と言われていて。エピソードと言えるかどうか、関係のない余談ではあるのですけれども。

 今後とも、藤本さんとはそういう形で色々なお付き合いが続いて行くだろうなと、これをご縁に。というそんな感じですかね(笑)。

――先ほどから、NHKの番組や本書もそうですが、熊絡みのお仕事が多いということですが……。

國村 そうなんですよ。なんかクマ、多いですね(笑)。

――有名な書籍も多いので、今後ますます國村さんの朗読でクマの本を読み進められればと期待しております。本日はどうもありがとうございました。

國村 いやいや、クマ専門ではないので(笑)。ありがとうございます、どうも。

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