「セントジェイムス(スコッチ・ウイスキー)、キースの会計、320ポンド」

 おいおい、32万円分のウイスキーを1週間で吞み干したのかよ! キースは大酒呑みとして知られる。ビートルズのドラマーで親友のリンゴ・スターが酒を片手に尋ねる。

「君が酒呑みって話はさておき、どういう経緯でザ・フーに入ったんだ?」

ADVERTISEMENT

 キースは「バンドに入って15年、メンバーだと言われたことは一度もない」と混ぜっ返すが、ピートが真面目に答えている。

「ある日キースが現れた。“ドラムは俺の方がうまい”と言う。ドラムの前に座り、壊しまくったのを見て“こいつだ”と思った」

小学生がそのまま大人になったような

 何のことはない、最初に“壊し屋”を始めたのはキースだった。映画を観て思うのは、キースって小学生がそのまま大人になったような奴だ。ちっともじっとしていない。すぐにおふざけを始める。インタビューにまともに答えず、隣のピートにじゃれついてシャツの袖を破く。「キース、何すんだよ」と怒らせてもどこ吹く風。それでいて、いざドラムセットを前にすると誰もまねのできない音量で叩き鳴らす。圧倒的な存在感を示し、最後はお決まりのドラムセットぶち壊し。まさに「キッズ・アー・オールライト(ガキどもは問題ねえぜ)」という映画のタイトルを地でいっている。

©Who Group Ltd

 SMの女王様にムチ打たれながらインタビューに答える場面も収録されている。「続けてくれ、手加減なしで」と言いながら。こんな一幕が撮影されていること自体、キースらしいと言える。親友のリンゴがキースの“武勇伝”を紹介するシーンもある。

「ホテルの部屋を壊したとか、車でプールや建物に突っ込んだとかね」