キースの神がかった演奏
最後は代表曲の『無法の世界』。キースはもはや酒でまともにドラムが叩けなかったというが、生前最後となるこのライブでは神がかった演奏を見せた。レーザー光線が交錯する中キース渾身のドラムが響き、ロジャーが絶叫。ピートがステージ上でスライディング。十八番の「風車奏法」を繰り出す。最高潮で締めくくると、ドラムセットの上から飛び降りたキースをピートがハグして、キス。大好きだという気持ちが伝わってくる。頭をクシャクシャっとする仕草は、珍獣を可愛がっているようにも見えるけど。エンドロールで流れる曲は『ロング・リヴ・ロック(ロックよ永遠なれ)』だ。
メンバーと肩を組み笑顔で観客に挨拶するキース。やがて薬物の過剰摂取で亡くなる。享年32。『マイ・ジェネレーション』の歌詞通り“老いる前に”世を去った。ピートとロジャーは健在だけど。エンドロールの映像を見ながら、メンバーは最後まで友だったと確信する。バンド仲間っていいなあ。ロックバンドよ永遠なれ! そんな気持ちが込み上げる作品だ。
『ザ・フー キッズ・アー・オールライト』
ビートルズ、ローリング・ストーンズと共にブリティッシュ・ロックの黄金期を牽引し、ロックを革新し続けたスーパーバンド、ザ・フー。全盛期の来日がかなわなかった彼らの1964年から78年までの代表曲のライブパフォーマンスを中心とした、ロック・ドキュメンタリー映画史上の傑作。本作はキース死後の79年、アルバム『四重人格』を原作とした映画『さらば青春の光』と同時公開されたが日本では未公開だった。HDレストア版で日本初劇場公開。
監督:ジェフ・スタイン/出演:ザ・フー(ロジャー・ダルトリー、ジョン・エントウィッスル、キース・ムーン、ピート・タウンゼント)/リンゴ・スター/1979年/イギリス/110分/原題:The Kids Are Alright/©Who Group Ltd/配給:オンリー・ハーツ/公開中

