創作の根源は「自分の中の葛藤を形にする行為」

――画材やサイズは変わっても、描くものの主題はあまり変わっていないのでしょうか。

別府 ええ。小さい頃、入院していた時に衝動的に絵を描き始めたのがきっかけなので、そこのスタンスはあまり変わっていません。自分との対話、という部分があると思います。

 以前、作家の吉本ばななさんがnoteでこんなふうに書いてくださったことがありました。

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〈私も、別府倫太郎くんも、山田詠美さんも、村上龍さんも、村上春樹さんも…みんな、なにかどうにもならない欠落があって、現実に耐えられないことがあって、いろいろ考えざるを得なかったからこそ、書くようになったに決まっているのです。〉

 本当にその通りだと思っています。

何者かであろうとする、全ての存在へ. To Every Trying to Be Someone.
2025/2273mm×1818mm/Acrylic on Canvas

――個展に寄せた言葉では、サルトルの「対自存在」を引用されていますね。

別府 サルトルの「人間は欠如がある、自分の形が定まっていない存在なんだ」という言葉が、自分の創作する理由やテーマにぴったりだと感じたんです。自分の中の葛藤とか、形にならないものをなんとか表そうとする行為が、言葉や絵において共通しているところだな、と。

――絵を描く上で、何か意識していることはありますか?

別府 自分の中に表現を制限してしまう気持ちが何かあると、やはり良い線が描けないんです。たとえば、「これは東京に出す作品だから」とか「キャンバス代がいくらかかってるから」とか、そういうことを考えてしまうとダメなので、できる限り自分の中のリミッターを外さないといけない。

 そのために音楽を聴いたり、お酒を飲めるようになったのでウイスキーを飲んだりします。酔拳のようにして描いたり(笑)。なるべくゾーンみたいなところに入って、変な迷いが生まれないようにしていますね。