「定まってなくてもいい」 作品に込めたメッセージ

――今回、個展の準備をする中で、昔のご自身の文章を読み返すことはありましたか?

別府 はい。昔の言葉をいくつか展示したいと思って、昔の文章を読んだ時に、自分で「こんなこと書いてたんだ」とハッとすることがありました。今より全然鋭くて、ちょっと怖いぐらいの切れ味があって。今の自分には絶対書けないな、と。

――その鋭さは、当時の年齢や環境だからこそ生まれた言葉だったのかもしれませんね。

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別府 そう思います。今回の個展のキャッチフレーズの一つに「色彩は痛覚である」という言葉があるのですが、子供の頃は感性が鋭すぎて、太陽の光が痛いと感じるように、あまりに感じすぎて辛いこともありました。それが、世界にだんだん慣れてきて、長期的に創作を続けていけるようになったのかな、と感じています。

 自分の特徴は、ジャンルにとらわれるのではなく、自分の中の表現したい衝動が様々な形になって溢れてくることだと思っています。今回の個展のタイトルは「pour-soi(プール・ソワ)」ですが、これはサルトルの言葉で「対自存在」、つまり「何者かであろうとしてもがき続ける」という意味です。定まっていないことって不安だし、世の中では敬遠されがちですが、作品を見てもらうことで「あ、でも定まってなくてもいいんじゃないか」みたいに、衝動そのものを肯定してもらえたら。鑑賞して何か感想を言わなきゃ、と構えるのではなく、そのものを見て、そのまま受け取ってもらえたら嬉しいです。

書籍『別府倫太郎』(電子版)
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別府倫太郎 初個展 「pour soi-プール・ソワ-」10月1日(水)~4日(土)東京・紀尾井町の文春ギャラリーにて。入場無料。
https://beppurintaro.com/exhibition2025/

Instagram @beppurintaro_art
https://www.instagram.com/beppurintaro_art/

別府倫太郎

別府 倫太郎

文藝春秋

2017年3月14日 発売

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