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「おまさんのこと、うんと好きちや」
しかし、戦争という残酷な現実がふたりの前に立ちはだかる。ついに豪にも赤紙が届き、戦地に出征することとなる。
壮行会の夜、朝田三姉妹がよさこい節を披露したのち、豪は黙って朝田家を出ていく。蘭子はそれに気づいて彼を追いかけた。
「きっと戻ってきて」「きっとやのうて絶対や」と蘭子が精一杯の思いを伝えると、これまで素っ気ない態度だった豪がついに「戻ってきたらわしの嫁になってください」と気持ちを伝えた。
豪は、蘭子のことが好きではあるものの、親方の孫娘であることから伝えられないでおり、皮肉にも“もう会えないかもしれない”という思いがふたりを素直にさせたのだ。
自分の気持ちをすぐに言葉にしないタイプの蘭子と豪が、お互いに大切に温めて育てていた愛が見えた瞬間だった。
ここで注目すべきは、河合の“返事の仕方”だ。蘭子は素直に「はい」とは答えず、嬉しそうに照れて首をかしげ、しばし間を置き、「うち、おまさんのこと、うんと好きちや」と言葉を絞り出した。どうしてもこの“好き”を伝えたかった蘭子の思いの大きさと強さ、そして勇気が伝わってくる場面だった。
静かに強く思いあっているふたりの姿があったからこそ今でも戦争がなく、このふたりが結ばれていたら、と考えてしまうし、改めて戦争の悲惨さを感じざるを得ない。




