ついに最終週を迎えたNHK連続テレビ小説(以下、朝ドラ)『あんぱん』。ヒロインののぶ(今田美桜)と嵩(北村匠海)が二人三脚で国民的キャラクターを生み出すまでを描いた本作では、彼らを取り巻くたくさんの人物が登場した。
その中には、画面に映っただけでドラマの空気感をガラリと変えてしまうキャラクターもいた。それが河合優実が演じる蘭子である。
視聴者が涙した豪(細田佳央太)との切ない恋
蘭子は朝田家の次女で、一度決めたら猪突猛進の姉・のぶと、天真爛漫な末っ子・メイコ(原菜乃華)に挟まれたしっかり者。相手の考えを読んで的確な行動をするところは、仕事をしっかりこなしながら、困っている人がいたら助ける三姉妹の母・羽多子(江口のりこ)に似ている。一方で、自分の心の内をさらけ出すのが苦手で、辛口発言をしてしまうこともある。
そんな蘭子の名場面といえば、祖父・釜次(吉田鋼太郎)に弟子入りしていた石工・原豪(細田佳央太)との淡く切ない恋だ。私たち視聴者が最初に「おや?」と思ったのは、御免与町の祭りで行われたパン食い競争でのシーンではないだろうか。
賞品であるラジオを釜次が欲しがったことをきっかけにパン食い競争に出ることにした豪は、参加登録のためお祭り会場へ。そこで受付をしていたのは蘭子だった。
「豪ちゃんも出るが?」「親方のために頑張ります」「応援するきね」と、交わしている言葉は淡々としているのに、蘭子のいつもとはちょっと違う弾んだ声と嬉しそうに豪を見つめる表情。賑やかな祭りの中でふたりの周りだけが静まり返るような演出も、河合の芝居があってこそ説得力を帯びていた。



