「有害図書」はなぜ減ったのか
指定図書数が激減した理由は幾つか考えられる。最も大きいのは「指定対象の減少」だろう。出版倫理懇話会に加盟する中小の出版社が出版するエロ漫画はほとんどが「成年コミック」「成年向け雑誌」「18禁」のマークをつけ、都の指定対象からは除外される「表示図書」になっている。
男性向けで指定される「一般コミック」は雑協(日本雑誌協会)、出版倫理協議会に所属する準大手が作るソフト路線のいわば「ライトエロ漫画」である。
女性向けジャンルが指定図書の大半を占めるようになったのも、もはや指定するに足る性表現を全年齢向けコミックスでやっているのはBLだけだからだ。女性差別的な発想で狙い撃ちされているわけではないと思いたい(担当職員や審議会委員に「こんな過激な性表現は女性が読むべきではない」的な偏見があるかどうかは不明だが)。
東京都青少年条例が制定された60年代中後期は、まだ「女性に性欲はない。あったとしても男性とは比較にならないほど低い」「女性は性表現に関心がない」などの非科学的な偏見が罷り通っていた。当時の女性が性表現や性情報に触れ得たのは、女性週刊誌や男性向けの雑誌のみ。パンドラの箱を開いたのは90年代のレディコミだった。その後をBL、TLが引き継いだ。
今後、どんな図書が8条指定図書類として指定されていくのか? 注視していきたい。ただ、紙の図書の存続自体が危ぶまれる中、どこまで継続的に指定していけるのかは不透明だ。
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